アマガミ 響先輩SS 「トリガー 休み時間の風景」


 (きーんこーんかーんこーん)
 

 「(お、おわった…… なんで英語の時間ってこんなに疲れるんだろう)」
 
 「(そもそも英語なんてできなくたって、日本人なんだし国語がしっかりできれば問題ない
 はずだよな)」
 
 「(……国語もできるってほどできる訳じゃないか)」
 
 「(屋上で気分転換でもしようかな)」


 橘さんは自分の席を離れると、のろのろとした足取りで教室から廊下へ出た。


 「お、大将、いいところへ」
 
 「これはちょうどいい、橘の意見も聞こうじゃないか」

 「そうだな」

 「なんの話をしてるんだ?」

 「いや、甘えてみたいお姉さんNO.1はだれかって話しでね」

 「甘えてみたいお姉さんか……」

 「やはりここは森島先輩しかないだろう? 考えても見ろ、ミスサンタコンテスト2連覇の学園の
 女王に誰が勝てるというのか。ああ、甘えたい。先輩に優しく「めっ」とか言われてみたい」

 「確かにそうだな。森島先輩は誰にでも気さくに接してくれるから、男女を問わず人気があるし、
 本命中の本命だろうな」

 「だろう?」

 「まったく大将がうらやましいね。どうやったら森島先輩からあんな風に扱ってもらえるのか
 教えてもらいたいもんだ」

 「(教えるもなにも僕が一番びっくりしてるんだけどな。でもあれは仲がいいと言うよりもペット
 扱いだよな……)」

 「でもな…… 森島先輩もいいが、ここはあえて塚原先輩だな。成績優秀にして水泳部の部長、
 しかも森島先輩を影からフォローしてるって話だ。非の打ち所がないお姉様ぶりだろ」

 「塚原先輩か……確かにすごい人だよな」

 「だろう? きっと優しくも厳しく勉強を教えてくれるに違いない」

 「いやいや、夕月先輩はどうだ?」

 「夕月先輩? ああ、茶道部の」

 「そう。一見粗野で男勝りに見えて、押さえるところはしっかり押さえる。夕月先輩がいるから
 茶道部が成り立ってるって話だ。先輩のお茶を飲んでみたいと思わないか」

 「お茶は飲んでみたいが……粗野で男勝りか。本人に聞かせてみたいな」

 「いや、まてそれはちょっと……」

 「で、橘は誰がいいと思う?」

 「ぼ、僕? ……そうだなあ」


  ・もちろん森島先輩に決まってるだろう
→・僕は塚原先輩を選ぶね
  ・ここは大穴ねらいだ。オレはあえて夕月先輩を選ぶぜ


 「僕は塚原先輩を選ぶね」

 「さすが大将。わかってるな」

 「塚原先輩と言うと、すごくできる人だしちょっと近寄りがたい雰囲気があるけど、実際に
 話をしてみるとそんなことは全然ない。とても友達思いだし、周囲から信頼されているし、
 水泳部の後輩からも慕われているからね。甘えてみたいお姉さんとしては最高なんじゃないか」

 「うむ、それは確かにそうだな」

 「森島先輩を見つめるまなざしや水泳部の後輩を指導するときの様子は、まるで母親のようだよ」

 「おお、そうなのか」

 「うん」

 「母親か…… それはまたちょっと路線が違うような……」

 「おほん、と、とにかく。僕は塚原先輩を選ぶよ」

 「さすが橘。毅然とした態度にしびれるね」

 「塚原先輩か、確かにそんな気がしてきた」

 「それじゃ僕は戻るから」

 「おう」


 軽く手を挙げ歩き出す橘さん。
 彼らのやりとりを物陰から見ていたはるかは、最初「え?」と言う顔をした後、「むむむ」と言う
表情に変わり、その後なにかを思いついたような顔になったかと思うと、最後には「そっかそっか」と
納得したような笑顔で自分の教室へと戻っていった。


 「(このときは気がつかなかったけれど、この良くある風景がそれからの物語の分岐点だったん
 じゃないかと思う)」

 「(塚原先輩との物語の)」


 塚原ひびき 「頼れる先輩」「あなたのお陰」「パーフェクトな存在」がオープンされました。



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