アマガミ 響先輩SS 「屋上に避難」


 「(休み時間になんとなく屋上にきてみたんだけど、風が冷たいなあ)」

 「(でも景色がいいから気分転換にはもってこいだな)」

 「(あれ? あそこにいるのは塚原先輩じゃないか。フェンスにもたれてなんだか
 ぼんやり外を見ているぞ、近づいて話しかけよう)」

 ……

 「塚原先輩」

 「あ、橘君」

 「ぼんやり外を見ているなんて、らしくないですね」

 「そう?」

 「はい、どうしたんですか?」

 「どうしたもこうしたも、はるかがしつこくて」

 「それはもしかして……」

 「そう、”ひびきが顔を赤らめるような相手が誰なのか絶対に聞き出すんだから”って、
 休み時間の度に追いかけられてるんだ」

 「……大変ですね」

 「んもう、他人事みたいに言って……」

 「え?」

 「あ、ううん、なんでもない」

 「それで今は屋上に避難しているんですね」

 「そうなんだ。まさかはるかがここまでしつこいとは思わなかったな」

 「そうですね」

 「まあ、いつもは私がはるかをからかってばかりだから、はるかがからかいたくなる
 気持ちもわからなくはないけど、実際にからかわれてみるとあまり楽しいものじゃ
 ないね」

 「……」

 「ああ、ごめんね。私はこの通りの強面だから、こう言うのに慣れてなくて、だから
 はるかにからかわれてもどうすればいいのかよくわからないんだ」

 「(塚原先輩はいつも自分を強面だって言う。確かにそうかもって思ったことはある)」

 「(でも、迷子の時の塚原先輩や、買い物の時の塚原先輩を見ていて思った。
 強面とかそんなの関係ない)」

 「(どうしたらそれが伝えられるだろう)」

 「強面なんて、そんなことないですよ」

 「え?」

 「森島先輩が明るくて男子に人気があっていつも賑やかだから横にいる塚原先輩の
 落ちついた雰囲気が際立ちますけど、だからと言って塚原先輩が強面で堅物だから
 敬遠する、なんて僕は思わないってことです」

 「え? え??」

 「塚原先輩の落ち着いたところは、後輩からすればすごく安心できるんです。
 七咲なんて塚原先輩に相談すれば絶対になんとかなるんだって、そう言っていますし。
 それに迷子の子は塚原先輩とすごく楽しそうに遊んでいたじゃないですか」

 「……」

 「強面なんて自分で言わない方がいいですよ。塚原先輩のファンは結構いるんですから」

 「ふふ、橘君はやさしいね。そうやってフォローしてくれるんだ。七咲やはるかが
 気にするわけだよね」

 「そう言うつもりで言ったんじゃないです」

 「でも、実際のところ私のファンなんて…… あ、後輩から信頼されているって言う
 点で言えば、女子のファン……はいないこともないか」

 「男子のファンもいますよ」

 「どこに?」

 「ここに」

 「……」

 「……」

 「あ、も、もうこんな時間。次の授業があるから…… それじゃあね。橘君」

 「あ、塚原先輩」


 自分の容姿を気にする塚原先輩。
 そりゃあ森島先輩に比べたら、ルックスは森島先輩の方が上だと思う。
 でも、魅力って見た目だけじゃないと思うんだけどな。
 僕の言いたかったことは伝わっただろうか。



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