アマガミ 響先輩SS 「仲のいい兄として……」


 「(なんとなく気になって校舎裏に来てみたんだけど……)」

 「(あ、塚原先輩と七咲がなにやら話し込んでいる)」

 「(うーん、ここは陰から様子を見た方がいいな)」

 ……

 「なるほど、そうなんですか…… あ、でも、なんでまたその話を私に?」

 「うん、七咲は彼のことを随分気に入っていたでしょ? 相当懐いてるなって思って
 いたから、ショックを受けていないかと思って……」

 「……そう言うことだったんですか。ええ、大丈夫です。心配いりません」

 「そう、よかった」

 「私、色々考えてみたんです。私にとっての橘先輩って一体どういう存在なのか」

 「うん」

 「考えて考えてわかったんです。私にとって橘先輩は、歳の近い仲のいいお兄ちゃん
 なんじゃないかって」

 「お兄ちゃん、か……」

 「ええ、ですから今回のこととは関係なく、今まで通り接すればいいんじゃないかって。
 今まで通り立ち話をして、タイミングが合えば一緒に帰って、商店街の買い物につき
 あってもらって…… そう言うのじゃダメでしょうか?」

 「いいも悪いも、私が決めることじゃないよ。七咲がどう思うか。どうしたいか。
 それだけじゃない?」

 「はい。ですから今まで通り、よろしくお願いします。塚原先輩」

 「……こちらこそ。聞こえた? そこで聞き耳を立てている橘君」

 「え、あ、気づいていたんですか」

 「あ、先輩……」

 「隠れて聞いているなんて感心しないよ」

 「あ、いや、ちょうど今通りがかったら七咲の”今まで通り……”が聞こえたんですよ」

 「ふふ、まあいいわ」

 「先輩。この間の件は塚原先輩から色々と説明してもらいました。これからも今まで
 通りよろしくお願いします。……お・に・い・ちゃん」

 「え? お、お兄ちゃん??」

 「ええ、私にとって先輩は仲のいいお兄ちゃんみたいなものです。あ、それとも
 美也ちゃんみたいに”にぃに”って呼んだ方が良かったですか?」

 「い、いや、今まで通りなら、先輩、でいいんじゃないかと思うんだけど」

 「……クスッ、冗談ですよ。大丈夫です。学校の中で"お兄ちゃん”なんて呼んだり
 しませんから」

 「はあ、びっくりしたよ」

 「くす。なんだか七咲の方が一枚上手みたいね」

 「ふふ、当然です。それよりも先輩、塚原先輩を困らせたり悲しませるようなことを
 したら、私も一緒に怒りますよ」

 「え? な、なんでそう言う話になるの」

 「それは…… 先輩がお兄ちゃんなら、塚原先輩はすごく頼りになるお姉さんなんです
 から。そのお姉さんの幸せを願うのはあたりまえじゃないですか」

 「な、七咲、その話は……」

 「あ、そうでした。と、とにかく、がんばって下さい。お兄ちゃん」

 「う、うん。よくわからないけど、がんばるよ」


 七咲が僕のことをどう思っているかよくわかった。
 塚原先輩は七咲のことを随分心配していたけど、これで安心できると思う。
 ところで、最後に七咲が言っていたのって一体どういうことなんだろう?



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