アマガミ 響先輩SS 「お節介はるか」


 「(休み時間か…… 教室にいてもつまらないし、屋上へ行ってみようかな)」

 「(う、寒い。うーん、今日は塚原先輩はいないみたいだな)」

 「(この間のやりとりで、もう、森島先輩が追いかけ回すこともなくなったかな)」

 「あ、橘君」

 「あれ、塚原先輩。どうしたんですか」

 「ふふ、ここに来ればいるかな、と思って」

 「休み時間ごとに来ているわけじゃないですけど。あれ、一人ですか?」

 「あ、うん、実はまたはるかから逃げてきたんだ」

 「え? でも、あの件はこの間のあれで話がついたんですよね?」

 「それがそうでもないのよ」

 「……それってどういうことですか」

 「確かに”ひびきの気になる男子はだれー?”って追いかけられることはなくなった
 んだけど」

 「一緒に帰ったこと、ばれちゃいましたからね」

 「うん、そしたら今度はね。”この週末カップルで行きたいお店特集”なんて言うのが
 載った雑誌を机の上に広げて置いたり、机の中にさりげなーく色々なお店のクーポン券
 を忍ばせてみたり…… どうやらアプローチの方法を変えたみたいなんだよね」

 「ははははははは……」

 「もう、笑い事じゃないよ。お陰でクラスの子達から色々聞かれるし、鬼の霍乱
 (かくらん)だ、とか、明日は雪だ、とか言われるし。なんとかしてはるかをの
 お節介を止めないと、この先が思いやられるな」

 「そうですね。なにかいい方法は……」

 「なかなか人の言うことを聞かないからね。はるかは」

 「うーん」

 「根本的な解決方法は、私と橘君が疎遠になることなんだけど……」

 「え、そ、それはちょっと…… 他の方法考えませんか?」

 「ふふ、よかった。そうですねって言われたらどうしようかと思った」

 「そんなこと言わないですよ」

 「気を悪くしたらごめんね。あくまで根本的な方法だから。そうね、他に解決方法は……」

 「そうですねえ…… あ、こんなのどうですか?」

 「どんなの?」

 「塚原先輩がされているのと全く同じように、森島先輩の机の上に雑誌を広げたり、
 机の中にクーポン券を忍ばせたりするんです。自分がされたら気づくんじゃないか
 なって」

 「うーん、はるかのことだから ”わお、こんな親切なことをしてくれるのはどこの誰?”
 って言いながら、嬉々として雑誌を読み始めると思うな。それで、読み終えた頃には、
 どこの誰が置いてくれたんだろう、なんてことは……多分すっかり忘れていると思う」

 「そう言われると、その光景が浮かんできますね……」

 「あ、こんなのはどうかな?」

 「どういう方法ですか?」

 「橘君がはるかに直談判しに行くの。君のこと、はるかはすごく気に入っているから、
 君から言われたらやめるんじゃないかな」

 「直談判は構わないですが、それ逆効果になりませんか?」

 「逆効果?」

 「ええ、森島先輩のことだから”どうして君がそれを知っているのかな?”って
 問い詰め始めて”ははーん、さてはひびきに頼まれたのね”ってなって……」

 「……そうだね。きっとはるかのことだから”んもう、君とひびきのためを思って
 やっているのに”って意固地になるだろうな。確かに逆効果だね」

 「塚原先輩と僕が迷惑しているって伝われば、森島先輩はやめてくれると思いますか?」

 「そうだね。これはまずい、と思ったらやめると思うけど……」

 「それなら、七咲に協力してもらうって言うのはどうでしょう?」

 「七咲に?」

 「ええ、七咲から森島先輩に聞いてもらうんです。塚原先輩か僕になにかしましたか、
 って」

 「それで?」

 「それで、七咲が僕から、塚原先輩との間がぎくしゃくしている、と聞いたって伝えて
 もらえば、まずいと思ってやめるんじゃないかなと」

 「なるほど…… お節介を焼いた結果、取り持とうとしている関係が壊れちゃ元も子も
 ないから、さすがのはるかもまずいと思うか。ふふ、橘君、冴えてるじゃない」

 「そりゃあ、真剣に考えますよ。塚原先輩ファンとしては、塚原先輩の困った顔は
 見たくないですからね。自分がそれに関係しているとなればなおさらです」

 「うん、それじゃ七咲に頼んでみるね」

 「はい、効果があるといいですね」


 森島先輩が塚原先輩にお節介を焼きたい気持ちはわからなくもないけど、
 ちょっと方向性がずれていると言うか……
 七咲に迷惑かけるのは申し訳ないけど、これでうまくいくといいな。



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