アマガミ 響先輩SS 「木の葉を隠すなら」


 「(そう言えば、塚原先輩、あの服を着る機会あったのかな)」

 「(色々バタバタして、あの服を着て出かけたかどうか聞きそびれていた気がする)」

 「(よし、今日の帰りに塚原先輩に聞いてみよう)」

 ……

 「橘君、おまたせ」

 「あ、塚原先輩。お疲れ様でした」

 「ごめんね。結構待ったでしょ? 七咲と練習メニューについてちょっと話し込ん
 じゃったんだ」

 「それで七咲のタイムがよくなるなら、待つことなんてなんでもないですよ」

 「そう? ふふ、君はいい人だね」

 「そんなことないですよ。まあ、強いて言えば、待つ相手が塚原先輩で、待った理由が
 七咲だから、ちょっとくらいなんともないって思えるんですよ」

 「そっか、七咲にとって君がお兄ちゃんなら、君にとって七咲は妹みたいなもの
 なんだね」

 「はは、そうですね」

 「ふふ、それじゃ待たせたお詫びに商店街でクレープ、なんてどうかな?」

 「あ、ちょうどお腹が空いてたところです。いきましょう」

 ……

 「クレープにツナマヨっていけますね」

 「ふふ、そうだね。クレープって言うと甘いものって言う印象があったけど、
 こう言うのもありなんだね」

 「ところで塚原先輩」

 「うん、なに?」

 「この間買った洋服、着る機会ありました?」

 「ああ、あれはまだ外では着てないよ。なかなか着ていく先もなくて」

 「そうですか……」

 「それが、どうかした?」

 「いえ、勧めたのは僕ですから、多少責任を感じると言うか……」

 「ふふ、そんなの気にしなくていいのに」

 「そうですけど」

 「あ、そう言えば君が言ったんだっけ。”着る機会がなければ作ればいい”って、
 だからそのうち機会を作ってみるよ」

 「……あ、そうか、作ればいいんだ」

 「え?」

 「塚原先輩。今度の日曜日、予定空いていますか?」

 「うん、大丈夫だよ。でもどうしたの? 急に」

 「そしたら、一緒に遊園地に行きませんか?」

 「ゆ、遊園地?」

 「そうです、遊園地です。さっき七咲から聞いたんですよ。近くの遊園地に家族で
 行ってきて楽しかったって」

 「へえ、そうなんだ」

 「ええ。普段着慣れない格好で出かける先にはもってこいですし、遊園地の中なら
 あのデザインだって気にならないですよ」

 「なるほど、そっか。確かにそうだね。でもいいの? 私と一緒で」

 「もちろん。それに、あの服を買うときに塚原先輩が言ったじゃないですか、
 ”着る機会がなかったらその時は作るから、よろしくね”って」

 「……ちゃんと覚えていたんだ」

 「ええ。それじゃ、決まりですね」

 「あ、うん、決まり、だね」

 「待ち合わせの時間と場所は……」

 「うん、わかった。ふふ、楽しみだな。日曜日」

 「そうですね」


 塚原先輩が買った洋服を着る機会をうまく作ることができた。
 すごく喜んでもらえたみたいだし、思いつきとはいえ言ってみるもんだな。
 ところで、待ち合わせの約束までしてから気がついたけど、これって塚原先輩とデートってことだよなあ。




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