アマガミ 響先輩SS 「謝るはるか」


 「(うーん、お腹いっぱいで幸せだなあ)」

 「(やっぱり、学食のとんこつラーメンは美味しいな)」

 「(うん、今の気持ちなら大抵のことは許せるぞ)」

 「あ、いたいた。橘君、ちょっといいかな」

 「あ、森島先輩。どうしたんですか? あわてて」

 「ちょっと話があってね……」

 「いいですよ。なんですか?」

 「その……」

 「???」

 「あの……」

 「一体どうしたんですか?」

 「えっと…… ごめんなさいっ」

 「は、はい?」

 「さっき逢ちゃんから、橘君とひびきの間がギクシャクしているって話を聞いて……」

 「ああ、その話ですか」

 「うん、あのね、悪気はなかったの。いつもひびきには迷惑かけてばかりだから、
 こういうときくらい力になりたいじゃない? まさか逆効果になるなんて、思わな
 かったのよ」

 「ちょ、ちょっと待って下さい。一体どう言うことなんですか?」

 「うーん、かいつまんで話すとね、ひびきの机の上に”この週末カップルで行きたい
 お店特集”が載っている雑誌を置いたりしたんだ。デートの参考になるかなって。
 そしたらひびきが怒り出しちゃって、橘君との間がギクシャクしたのもそのせいじゃ
 ないかなって」

 「なるほど、そう言うことだったんですか」

 「うん、そう言うわけだから、ちょっとギクシャクしたからってひびきを遠ざけるとか
 避けるとか、そう言うのは考え直してもらえないかな。もうしないから、ひびきと
 仲良くして。ね、お願いだから」

 「森島先輩、それ塚原先輩に言いました?」

 「ひびきに? ……まだ」

 「だとしたら、僕よりも先に塚原先輩に伝えたほうがいいんじゃないですか?」

 「そうかな」

 「ええ、森島先輩が色々お節介を焼いて、それがギクシャクの原因なんだとしたら、
 僕じゃなくて塚原先輩に伝えないと。僕が塚原先輩と仲良くしない理由なんてない
 ですから」

 「あ、そっか。そうよね。うん、わかった。ありがとう、橘君」

 「いえ」

 「ひびきに謝ってくるね」

 「はい」

 ……

 「うまく言ったみたいですね。先輩」

 「ああ、七咲。ありがとう、お陰で森島先輩のお節介も止みそうだ」

 「いえ。それに塚原先輩がイライラしていると、こっちにまでとばっちりが来そう
 で……」

 「そんなことはないと思うけど」

 「実際にとばっちりがくるわけじゃないですけど、でも練習中にピリピリとした
 オーラを感じるのは嫌なものですよ」

 「はは、そうか」

 「それにしても、森島先輩の性格をよく読んだ作戦でしたね」

 「さすがは塚原先輩、だな」

 「ええ」

 「それに、七咲がうまく森島先輩に話をしてくれたから、だと思うよ」

 「笑わないように、真剣な顔で話すのは結構大変でしたよ」

 「そっか、ありがとう」

 「いえ……」

 「何かお礼をしなくちゃな。なにがいい?」

 「えっと、それでしたら、あのラーメン屋さんにまた連れて行って下さい」

 「ああ、お安い御用だ」


 僕らの思惑通り、森島先輩はお節介をやめてくれそうだ。
 ちょっとかわいそうな気もするけど、放っておくとどんどんエスカレートしそうだから、
 塚原先輩の機嫌がこれ以上悪くなる前にとめておくほうがいいよな……




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