アマガミ 響先輩SS 「守りたい笑顔」


 「(さあ、今日も塚原先輩と一緒に帰るぞ)」

 「(休み時間に待ち合わせの約束をしたから、そろそろ来るはず……)」

 「塚原せんぱーい!!」

 「ふふ、お待たせ。そんなに大きな声出さなくても聞こえるよ」

 「あ、すみません。つい」

 「待った?」

 「少しだけ」

 「よかった。私を待っていて風邪引いたりしたら申し訳ないもの」

 「ああ、それなら大丈夫です。元気だけがとりえですから」

 「ふふ」

 「今日もどこかに寄っていきますか?」

 「そうだね。商店街のほうに行ってみようか」

 「ええ」

 「そう言えば、前にゲームの事を教えてもらいそこねたことがあったよね」

 「ああ、迷子の相手をしたときですね」

 「うん、そうそう。もし橘君がよければ、ゲームセンターに行ってみたいな。
 私、あまりよく知らないんだ」

 「そういうことなら、まかせてください」

 ……

 「……これが最近流行りの大型ゲームですね」

 「へー、中に入っちゃうんだ」

 「そうです。コックピットみたいになっていて、リアルですよ」

 「ねえ、こっちのは?」

 「こっちは対戦ゲームです。向こう側に同じゲーム機がありますよね?」

 「うん」

 「あのゲーム機とこのゲーム機で戦えるんです」

 「コンピューター相手じゃないから、難しそうだね」

 「ええ、滅茶苦茶強い相手に当たることもありますからね。手も足も出なかったことも
 ありますよ」

 「へー、すごい人がいるんだね」

 「あっちは定番のクレーンゲームです。あ、森島先輩の好きな、ダッ君が入ってますね」

 「ほんとだ。ふふ、はるかが取れるまでハマりそうな気がする」

 「はは、そうですね」

 「んー、ねえ、あれは?」

 「あれはメダルゲームコーナーですね。スロットとか競馬とかちょっと大人向けかな」

 「あ、あっちはわかる。プリクラコーナーだね」

 「そうですね」

 「最近いろんなのが出てるよね」

 「塚原先輩、プリクラは?」

 「はるかの付き合いばかり」

 「森島先輩、好きそうですよね」

 「そうなんだ。まあ、楽しいからいいんだけどね」

 「それじゃ、塚原先輩、どれやります?」

 「うーん、そうだね。君のおすすめは、どれ?」

 「それじゃ、あの対戦ゲームはどうですか?」

 「うん、いいよ」

 ……

 「橘君、上手だね。あっという間に倒されちゃった」

 「塚原先輩も筋がいいですよ 途中からどんどん技の切れがよくなった気がします」

 「そう?」

 「ええ」

 「そう言ってもらえるとうれしいな。ね、もう一回やろうか」

 「いいですよ」

 「(うわ、塚原先輩上達早いな…… 油断できない)」

 「ふふ、楽しいね」

 「それはよかった。次はどうします?」

 「うーん、そうだね」

 「塚原先輩がやってみたいものにしましょう。僕ばかり楽しんじゃ悪いですよ」

 「……そう? うーん、それじゃ」

 「それじゃ?」

 「プリクラがいいな」

 「プリクラ、ですか?」

 「うん、いつもはるかとばかりだから、今日は君と一緒に撮りたいな……」

 「え、ぼ、僕と一緒……」

 「うん、ダメかな?」

 「あ、そんなことないです。その……プリクラでツーショットなんて初めてだから
 ちょっと照れくさいと言うか……」

 「め、迷惑ならいいよ。無理しなくても」

 「迷惑なわけないじゃないですか。僕は塚原ひびきファンクラブ公認第一号ですよ」

 「くす。じゃあ、お願い」

 「ええ、よろこんで」

 ……

 「あ、こうやって後から色々書けるんですね」

 「うん、こう言うデコレーションも魅力の一つだね」

 「どんな風にするんですか?」

 「えっとね。こうやってフレームを選んで、ペンで落書きしたり、こうやって……
  ”ひびき” 名前を書いたりするんだ」

 「なるほど、それじゃ先輩の名前の横に ”純一” と」

 「くす、なんだか照れるね」

 「そうですね」

 「じゃ、これプリントするね」

 「え? あ、はい」

 「はい、できあがり。半分こするから、はい、これは君の」

 「ありがとうございます」

 「一枚は手帳に…… うん。これははるかや七咲には内緒にしておこう」

 「じゃあ、僕も手帳に……」

 「ふふ」

 「ははは」

 「橘君、ありがとう。これ大事にするね」

 「そう言ってもらえると、光栄です」

 「大げさね」

 「そんなことないですよ。僕もこれ、大事にしますね」

 「うん」


 塚原先輩と撮ったプリクラ。
 フレームの中で先輩はにっこり笑っていた。
 先輩がいつもこんな笑顔でいられるようにしたい、そう思った。



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