アマガミ 響先輩SS 「迫るはるか」


 「あ、いたいた」

 「森島先輩」

 「ちょっと時間いいかな」

 「いいですよ」

 「ひびきの様子が元に戻ったんだけど、なにか心当たりある?」

 「……ないこともないですね」

 「なんだか遠まわしな言い方だね。気になるなあ」

 「元に戻ったのならそれでいいんじゃないですか?」

 「元に戻ったって言うか、あらぬところを見上げてため息をつくことがなくなって、
 手帳を見てにやけてる時間が増えた感じ」

 「そ、そうなんですか」

 「そう。だから君が何かしたんじゃないかって」

 「な、なんでそうつながるんですか?」

 「そりゃあ、横からちょっとのぞきこめば見えるわよ。手帳に貼ってあるプリクラ
 くらい」

 「……あー、見られちゃいましたか」

 「ふふふ、あんないい顔したひびきはなかなか拝めないんだから」

 「そうなんですか」

 「ね、ひびきになんて言ったの? 好きです、とか、愛してます、とか、付き合って
 下さい、とか、そんなところ?」

 「あ、いや、その」

 「隠すことないでしょ? ひびきのあのでれでれ具合はちょっとした事件なんだから」

 「その、塚原先輩は僕にとって特別な存在です、と」

 「ふむふむ…… うーん、特別な存在、か」

 「な、なにか問題ありますか?」

 「ちょっと弱いかな。そんなのじゃ女の子をつなぎとめておけないぞ」

 「ええ!?」

 「はあ、橘君は気付いてないのか。最近ひびきの人気が急上昇中なのよ」

 「ほ、本当に?」

 「うん、多分君の影響が大きいと思うんだけど、ひびきの硬かった部分がずいぶん
 取れたからかな」

 「た、確かに雰囲気が柔らかくなったとは思っていましたけど」

 「気をつけないと、他の男の子に持っていかれちゃうわよ」

 「そ、そんな」

 「特別な存在、なんて言い方じゃダメ。もっとちゃんと、好きなら好きってストレート
 に伝えないと」

 「は、はい」

 「うん、よろしい」

 「うーん、どのタイミングで伝えよう……」

 「なるべく早いほうがいいと思うな。いつラブレターが舞い込んでもおかしくないと
 思うから」

 「そうですか。森島先輩、ありがとうございました」

 「うん。あ、ひびきにはこのことは内緒ね。またお節介焼いてって怒られちゃうから」

 「はは、わかりました」


 特別な存在。
 確かにそれはそうだけど、ちょっと遠まわし過ぎたのかもしれない。
 クリスマスの創設祭、そこで伝えよう。
 塚原先輩に僕の気持ちを。




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