アマガミ 響先輩SS 「うまのしっぽ」



 「(あ、前を歩いているのは塚原先輩だ)」

 「(うっ…… き、気になる。ふわふわ揺れるあの髪の毛が気になる)」

 「(い、いや、待て。気になるからと言って手を出してしまったら、
 塚原先輩になんて思われるか……)」

 「(ああ、でも気になる。ぴょこぴょこ動くポニーテールがすごく気になる。
 ああ、触りたい掴んでみたい)」

 「(も、もうだめだ。ここは意を決して!)」

 「(えい!)」

 すすっ

 「(ええ!? い、今の間合いは完璧だったはずなのに)」

 「(もう一度、よく狙って…… てりゃ)」

 すすすっ

 「(な、なんでだ。なんでこの距離で掴めないんだ)」

 「も、もう一度!」

 「なにがもう一度、なの?」

 「え!? なぜ心の声が」

 「心の声も何も、口に出てたでしょう?」

 「しまった。つい……」

 「ふふ、さっきから何をしようとしているのかな?」 

 「え、えーっと」

 「後ろからいきなり髪の毛をつかもうとしたら危ないよ?」

 「ば、バレてました?」

 「くすっ、背後でそんな変な動きをすればばれないわけないと思うけど」

 「た、確かに」

 「それで、私の髪の毛をつかんでどうするつもりだったの?」

 「その、単につかんでみたかっただけです。目の前でふわふわ動くポニーテールが
 すごく気になってしまって」

 「ふふ、なるほどね」

 「す、すみません」

 「謝るくらいなら始めからしないほうがいいと思うけど」

 「はい……」

 「ふう…… それで、つかんでみたいんだっけ? ……ちょっとだけなら、いいよ」

 「え、ほ、本当ですか」

 「うん、橘君、気になって仕方ないって顔してるから。あ、でもちょっとだけだよ。
 人が通りかかったら恥ずかしいから」

 「は、はい。では早速……」

 「(ご、ごくり……)」

 「(あ、先輩からなんだかいい香りがする……)」

 「(シャンプーの匂いかな、それともコロンかな……)」

 「(さ、早速ポニーテールに触ってみよう……)」

 「(あ、美也の頭をなでる時とはまた違う感触だ……)」

 「(ああ、これがポニーテールの触り心地なんだ……)」

 「(なんだかとっても太い筆を触っているようなそんな感じなんだな……)」

 「(ああ、気持ちいいな。いつまでも触っていたい気がする……)」

 「(さわさわ)」

 「(さわさわさわ)」

 「(さわさわさわさわ)」

 「た、橘君。そろそろいいかな……」

 「あ、す、すみません。なんだかすごく触りごこちがよくて」

 「そう言ってもらえるのはうれしいけど…… もう休み時間が終わるよ」

 「ああ、そうですね……」

 「触り心地はどうだった? 期待と違ってガッカリしたんじゃない?」

 「そ、そんなことないですよ。むしろまた触りたいな……って」

 「え……。う、うーん、そうだね。人が見ていなければ」

 「え?」

 「また触っても……いいよ」

 「ほんとですか」

 「ふふ、特別だよ」

 「はい」


 塚原先輩のポニーテールに触らせてもらった。
 柔らかなさわり心地、いい匂い。なんだか夢のような体験だった。
 心なしか先輩の耳やほほが赤らんでいた気がするけど、気のせいだよな。



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