アマガミ 響先輩SS 「水まんじゅうおいしいね」



 それは塚原ひびきが3年生の夏。
 まだ、橘さんを橘さんとして認識する前の話。

 校舎裏、水泳部部室で部員達が雑談をしていた。


 「塚原先輩っ」

 「どうしたの?」

 「あの、お盆におばあちゃんの家に行ってきたので、これみんなにおみやげです」

 「おみやげ? ふふ、わざわざありがとう」

 「これ葛餅?」

 「うわぁ、おいしそう」

 「水まんじゅう……ですか」

 「うん、おばあちゃんの家が福井で、近所に売ってるんだ」

 「へえ、おいしそうだね。見た目も涼やかだし」

 「美味しいですよ! おばあちゃんちでは井戸水で冷やして食べるんです。
 もう冷たくっておやつにもってこいなんですよ」

 「練習が終わってちょうどお腹もすいているし、みんなでいただこうか。
 練習後のミーティングは、それからでいいわ」

 「わー」

 「……あの、これどうやって食べるんですか?」

 「入れ物に口つけてつるんって」

 「入れ物に口をつけて……」

 「ちょっと出てきたら、あまがむようにするとうまく食べれますよ」

 「あまがむように……(ちゅるん。くにくにくに……こくん)はぁ」

 「ど、どうですか……」

 「初めて食べたけど、これおいしいね。ぷるぷるした感じが面白いし、中から出てくる
 あんが滑らかでくどくなくて、でも甘くて。ふふ、何個でも食べられそう」

 「よかった、喜んでもらえて」

 「えっと、口をつけてつるんと……んっんんっ!」

 「な、七咲、大丈夫?」

 「ら、らいりょうふれす……、ん、んん、ふぅ。……美味しい」

 「ね、美味しいでしょ?」

 「はい、美味しくて、なんだか不思議な感じでした。今度食べることがあったら
 もっと味わって食べようと思います」

 「くすっ、七咲がそんな風にあわてるのは珍しいね」

 「え、そ、そうですか?」

 「そうだね。七咲さんっていつも冷静だから」

 「七咲でもあんな顔をすることがあるんだなって、ちょっとした発見だったな」

 「つ、塚原先輩、からかわないでください」

 「ふふ、それじゃミーティング始めようか」

 「「「はーい」」」


 水まんじゅうが練習で疲れた身体にちょうどいい三時のおやつになったのでした。



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このお話は、ひびきスレにアップしたものの再録です。
”個人的には水まんじゅうのぷるぷる感と心地良い甘さに舌鼓を打つ塚原先輩が見たい”と言う
レスがあったので、書いてみました。
いえね。水まんじゅうってそんなにメジャーな食べ物じゃないと思うんですよ。
たまたま嫁さんの関係でおいらは毎年食べていますが。
なもんで、これは知ってる自分が拾って書くしか!と思ったわけです(笑)
なにが琴線に触れるかわからないものですね。ホントに。


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