年賀状 −ちび椎那のつぶやき8−



  年も押し詰まってきた12月 そろそろ年賀状の準備です



  師走の忙しさにかまけていると ついつい書くのが遅れてしまうので

  奥様と一緒に 早いうちからちひろさんをせっつきます


  早いと言っても もう12月も半ば

  宛名を書いて一言入れたら 今年も残りわずかです


  急いで絵柄を決めて 印刷に出すなりしなければいけないのですが

  ちひろさんは雑誌を2冊ほど買ってきただけ どうするんでしょ?


  ちひろさん わたしと奥様を呼ぶと雑誌を広げました

  なかには2枚のCDと 絵のサンプルが一杯……


  どうやら雑誌に入っている絵を使うみたいです

  それじゃあ と奥様と二人で目を通し始めました




  あう 色々あって迷っちゃいます

  横で奥様も思案顔 なかなか「これ」と言うものがありません


  「組み合わせでもいいよ。加工すればすむから」 とちひろさん

  なるほど パーツだけでもいいんですね


  「そうですね〜 ならこれなんかどうでしょ?」 とわたし

  うさぎさんが 竜の上に乗ってる絵です


  「あたしはこっちかな?」 と奥様

  同じような感じの絵 フレームがラーメンどんぶりのマークようです


  この2枚の絵を うまく組み合わせて使うことになりました

  ちひろさん なんだかにこにこしてますね




  次の日の夜 お仕事から帰ったら絵柄ができあがっていました

  奥様が 暇を見つけて加工したんだそうです


  もう住所も名前も入っていて このまま印刷すればいい状態

  奥様がちひろさんに 色味を相談しています


  ……でも 画像の加工はちひろさんのお仕事だったような

  もしかして 会社からお家にかけた電話はこのことだったんでしょか?


  確かにここのところ ちひろさんのお仕事はかなり忙しくて

  チャットする暇はあるけど画像を加工する暇がない ってぼやいてましたね


  わたしがそんなことを考えていると 奥様がご実家へ電話をかけ始めました

  どうやら カラープリンターを借りる約束をしてるみたいです


  そう お家にはカラープリンターがないんです

  一体どうやって印刷するんだろうと思ってたんですが なるほど納得です


  近いうちに わたしとちひろさんで印刷にうかがえばいいんですね?

  久しぶりの奥様のご実家 今からちょっと楽しみです






  年賀状の絵柄を作ってから なん日か経ちました

  今日はちひろさんと一緒に 奥様のご実家へお出かけです


  奥様のご実家まで行く と言うと大げさに聞こえますけど

  同じ市内にあるから 行くのもそんなに大変じゃないです


  奥様はちょっと調子が優れなくて お留守番

  なんだか つまらなそうです


  大丈夫でしょか?


  そんな風に心配していたら 奥様が笑って頭をなでて下さいました

  大丈夫だから気にせず行ってらっしゃい と微笑んでいます


  わかりました その分しっかりとちひろさんのお手伝いをしますね

  そう答えて ちひろさんと一緒にお家を出ました




  電車を一度乗り換えて 途中でお茶請けを買って

  バスに揺られた先に ご実家がありました


  ついてすぐに ちひろさんはパソコンとプリンタにかかりきりに

  わたしは ご実家のお母様と世間話です


  お母様がわたしを前に 身振り手振りで色んなお話をしてくれます

  わたしも 身振り手振りでお返事します


  二人して ちひろさんにお茶を持っていくのを忘れてしまいました

  それに気づいたお母様が あははははっと笑っています




  ほどなくして ちひろさんの呼ぶ声

  どうやら お手伝いが必要みたいですね


  パソコンの置いてあるお部屋に 連れていってもらいます

  慣れないプリンタのせいか 悪戦苦闘したみたいですね


  やっといい条件が見つかったと ちひろさんが苦笑いしています

  さて なにをお手伝いすればいいんでしょ?


  ふむふむ わかりました

  プリントアウトされたはがきを 向こうのはがき立てに立てかければいいんですね


  早速プリンタの前で はがきが出てくるのを待ちます

  そんなわたしを見て ちひろさんとお母様が笑っています


  なにがおかしいんでしょ?




  きしゅーん きしゅーん と言う高い音を立てて

  プリンタさんが 一生懸命お仕事してます


  ててててて ててててて

  一枚できあがる毎に それを向こうに持っていきます


  むむむ 結構プリンタさんもやりますね 

  次から次に はがきが刷り上がってきます


  今のプリンタは良くできてるから ほんとは乾かす必要ないかもしれないけどね

  ちひろさんが 苦笑いしています


  でも 念には念を入れましょう

  せっかくみんなで絵柄を考えて ご実家まで作りに来たんですから


  ててててて ててててて

  ててててて ててててて


  ててててて ててててて

  ててててて ててててて


  はあふう はあふう

  け、結構疲れますね




  かなりの枚数をこなしたあたりで プリンタさんがとまりました

  インク切れ だそうです


  インクを換える間に ひとやすみ

  お母様が お茶を持ってきてくれました


  さ もう一踏ん張りですね

  お茶を飲んで一服したちひろさんに そんな風に声をかけます


  ちひろさんが よろしく頼むなって頭をなでてくれました

  なんだかとっても うれしいです




  きしゅーん きしゅーん

  ててててて ててててて


  きしゅーん きしゅーん

  ててててて ててててて



  ふう どうやら思ったほど時間もかからずにすみました

  後かたづけをして もう一度一服してから帰り支度です


  お母様が またおいでと頭をなでて下さいました

  はい きっとまた遊びに来ますね




  駅まで車で送ってもらって 電車に揺られて

  お家まで もうあとちょっとです







  ……実は こうして作った年賀状は

  結局 頂いた年賀状の返信にしか使われなかったんです


  プリントアウトした100枚は どれも送られることなく年を越したんです

  どうしてそうなっちゃったのか いつかお話しすることもあるかも知れません


  今は 結局送らなかったと言うことだけ ここに記しておきます


fin20000201
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『奈落』掲示板にアップしたときはその1、その2となっていたのを
再録に当たって1本にまとめました。
その1を書いてからその2をアップするまでにしばらくかかってしまい、
気にされていた方(がもし居られるなら、その方)には申し訳ないことを
してしまいました。
不定期連載とはいえ、続き物を長々放っておくのはよくないですね。
ちょっと反省してます(^^;;
で、なぜ送れなかったか、なんですが、年末のちょうど年賀状を出すような時期に
嫁さんが入院しまして、それどこじゃなくなっちゃったんです。
幸い1週間ほどで退院できましたが、あれやこれやで、結局年を越してしまったんです。
ま、それに関する話はいずれちびしいが語ってくれるかもしれません。
ではでは。

20000409 奈落より再録






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