ちひろさんのお仕事が あいかわらず忙しくて
今日も10時前のバスになりました
この時間にしては ちょっと混み気味のバスに揺られて
JRの駅に向かいます
いつもの道を いつものように走るバス
おいしい匂いのパン屋さんの横を いつものように走り抜けます
いつもを違ったのは パン屋さんの先にある交差点
小さな車がバスの前をのろのろと走っています
パッパッパァ〜〜ン
その小さな車めがけて バスのクラクションが鳴りました
確かに往来のじゃまです
え? そうじゃないんですか?
ちひろさんが運転手さんのほうを指差しています
運転手さんなにやら手で合図してますね どうしたんでしょ?
窓の向こうを見ます
……なるほど
バスは小さな車をよけると その先の普段なら通過する
お客さんが居ないバス停に止まりました
待つことしばし
ぷしゅ〜
と音がしてバスの扉が開きました
おじさんが一人飛び乗ってきます
実はこのバス 夜遅くなると途中通る道が変わるんです
おじさんはそれに気づかなかったのか 変わる前のバス停にいて
途中で気づいてこっちにかけてきたみたいなんです
運転手さんはそれに気づいて おじさんにクラクションを鳴らしたんです
この先のバス停で停まって待ってるって 手で合図して
この出来事のせいで バスが駅に着くのが少し遅れちゃいました
ちひろさん ホームまでダッシュです
間違えたのはおじさんなんだから わざわざ待つことはない
そう言う人もいると思います
でも こういう世知辛いせかせかした世の中で
こんな風にしてくれる運転手さんも居るんだって わかったから
だからちょっといいお話なんじゃないかな?って 思ったんです