待ち望んだひととき


    いつもの公園
    二人で見つけた場所
    あなたが帰ってきた場所
    また少し暖かくなった風がやさしく頬をなでていく


    ベンチに座るあなたとわたし
    膝の上には焼きたてのタイヤキ
    そう、いつかあなたが話していた
    必ず一緒に食べようって決めていた
    タイヤキ


    冷めないうちに食べ始める

      ぱく……

    口の中に広がる餡の甘さ
    思わず顔がほころんでしまう、甘さ

      ぱく……

    口の中をやけどしそうなくらいの熱さ
    でも心地よい、熱さ

      ぱく……

    幸せをかみしめるように、少しずつ、食べる
    少しでも長く味わえるように、少しずつ


    …………
    ふう
    ごちそうさまでした

    今まで食べた中で一番のタイヤキ
    焼きたての熱々だったから
    尻尾までぎっしりと餡が詰まっていたから
    程よい甘さの餡だったから
    ううん、それだけじゃない

    あなたが横にいたから
    あなたと一緒に食べているから
    だからこんなにも、おいしい

    ……わかってますか?


    ふっと顔を上げると
    あなたがのぞき込むようにわたしを見ています
    え? こういう時は感想を言うものだ?
    そうですね、おいしさとうれしさでつい忘れてました

    「……10点です」

    少し間を置いて答えます

    「何点満点で?」

    すかさずあなたが聞いてきます


    「もちろん、10点満点で」


fin981112
------------------------------------------------------
このお話は、ANGELさんのページの裏門用に、
ANGELさんの描かれた茜のCGをモチーフにして
書いたものです。
今回、その他の雑文コーナーを作るに当たって再録しました。
ANGELさんのページは現在休止中で、元になったCGを
お見せできないのが残念です。

20000507再録に当たって若干手直し






リストに戻る。