まちあわせ


    日曜日、朝の恋愛通り。
    眩しい日差しに浮かぶStarrySky。
    お客さんもまばらになる時間。
    テーブルに肘をつき、ソーダのストローをなんとはなしにもてあそぶ。
    お目当ての人はまだ、こない。


    ふっ、と顔を上げ、周りのテーブルを見回してみる。
    あたりのテーブルにはカップルの高校生。
    今日のデートの相談かな?
    楽しげに話をしている。
    放課後、学校帰りの恋愛クラブ。ほんのわずかな時間。
    わたしたちもあんな風だったのかな?なんてちょっと思ってしまう。
    あの時の自分を思い出すと、今でもちょっと照れくさい。


    あれから季節が何度も巡り、その間、喜んだり、悲しんだり、
    照れたり、拗ねたり。怒ったり。
    あなたと一緒にいろいろなことを経験した。
    ううん、あなたと一緒だから、経験できた。
    もうだめなのかな?って本気で思ったこともあった。
    でも、今は言い切れる、わたしはあなたとずっと一緒だと。
    あの時の気持ちとかわらないと。


    ・・・
    まだこない。
    いつものことだけど、なんだか不安になってしまう。
    恋愛クラブで、あなたがツーショットに来てくれなかったときのように。

    ・・・軽く顔を左右に振る。
    そんな心配は、もう、いらないのだから。


    隣のテーブルで、料理の本を読んでる人がいる。
    あなたにほめてもらいたくて、こっちを向いてもらいたくて頑張った料理も、
    季節の分だけ腕前が上達したみたい。
    あなたが食べてくれるから、ほめてくれるから上達できたんだって、そう思う。


    季節が巡り、何度目かの夏が来た。
    わたしは今もこうしてここに座っている。
    あなたが来るのを待っている。


    からん、とドアベルの音。
    いらっしゃいませー、とウェイトレスさんの声。


    「練一先輩。こっちですこっち!!」大きな声で手を振る。
    「ななせ、頼むからそうやって店の中で手を振るのは勘弁してくれよ」

    照れくさそうにこっちにやってくる練一先輩。
    店中の視線を私たちで独占しちゃってる。

    「えー ななせは先輩が来るのをずっと待ってたんですよー
     やっと来てくれたから、うれしくて、つい。」
    「ごめんごめん。じゃ、いこうか」
    「はい! あ、今日は一日、遅れてきた練一先輩のおごりですからね。」


    多分、わたしは満面の笑みを浮かべているんだろう。
    彼の腕を取り、店の外に出る。
    眩しい太陽。
    青い空に、もくもくと白い入道雲。
    腕を組んで恋愛通りを歩いてゆく。


    「どこにいこうか?」先輩が尋ねてくる。

    「えっとえっと・・・ななせは先輩と一緒ならどこにでも!」


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放課後恋愛クラブの堀川ななせのお話、
踊る職人さんに暑中見舞い代わりにお贈りしたものです。

以下、その時の言い訳(笑)

  ・・・ということで、恋クラのななせSS(?)です。
  最近恋クラをやってないもんで、言葉遣いとかが怪しいですが、
  いかがでしたでしょうか?

  ななせっていうと、元気いっぱい一直線!っていうイメージが
  あるんですが、一人の時はこんな一面ものぞかせるんじゃないかな?
  と思って書きました。

  舞台設定は、練一:大学2年 ななせ:大学1年 季節:夏
        デートの待ち合わせを、StarrySkyでする二人。
  といったところです。

  お話の最期にかかる曲は「放課後恋愛クラブ」よりは
  「新しい予感」のほうがしっくりきそうなのはご愛敬ってことで(^^;;


20000508 収録



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