2002/02/13 最萌えトーナメントセリオ支援SS兼セリオ誕生日おめでとうSS
 

「セリオ、買いました2 〜St.バレンタインデーとそして〜」
                                          by◆ChibisA2
 
 

 唐突だが、うちのセリオはやりくり上手だ。
 セリオを購入して以来、財布のひもを総て預けているが、日々の家計をその乏しい財布
の中身でうまくやっている……らしい。
 らしいと言うのは、家計を預けて以来一度もセリオから「今月は赤字だわ」と言う、
安っぽい4コマ漫画のようなセリフを聞いたことがないから。
 この間、久しぶりに通帳の中身を見たら、わずかながら蓄えまであってびっくりした。
 セリオには自分やちびセリオの服、家の消耗品などを自分の判断で買うように言って
ある。
 いくらメイドロボって言ったって、年がら年中着たきりスズメと言うのはあんまり
だからだ。
 実際、セリオもちびすけもそれなりに服を持っている――ちびすけの服はほとんど
セリオの手作りだが。
 にもかかわらず、貯金までしているとは……
 どうやらセリオは、オレにはもったいないくらいの”できたおねーさん”らしい。
 
 

 とある日曜のこと。
 オレとセリオとちびの3人で買い物に出た。
 街にはバレンタインデーのチョコが溢れかえっていた。
 そういやそんな時期か。
 バレンタインデーと袂を分かってもう何年になるかなぁ。
 たまーに保険の勧誘のおばちゃんがチョコくれるくらい。
 とんとお見限りだ。
 まあ、甘いものに目がないってわけじゃないから、チョコがなくても死にはしないけど。
 でもまあ、これだけどこもかしこもバレンタインバレンタインと騒いでいると、否応
なしにチョコとその売り場に群がる女の子達が目に飛び込んでくる。
 ふーん、すごいなぁ。
 チラチラとチョコ売り場を横目に見ながら、セリオの買い物に付き合って回った。
 セリオが買いに来たのは、夕飯の材料と手芸用品。
 何を買うのか知らないが、売り場でなにやら見繕っている。
 オレにはなにがどう違っていて、だからどうか、なんてことは全然わからないから、
セリオとセリオの肩に乗ったちびすけがああだこうだと言いながら選んでいるのを、
売り場の外で見ているだけだった。
 手芸品のコーナーって、なんかこう近寄りがたいんだよね。
 手持ち無沙汰でぼけーっと2人の様子を見る。
 なんか間抜け。
 下手するとストーカー扱いされかねないかもしれない。
 うー、しかし、どうしてこう女の買い物ってのは時間がかかるかねえ。
 こんなことなら下の喫茶店でコーヒーでも飲んで待ってれば良かった。
 今からでもそうするか?
 うーむ。
 ……うん、そうしよう。
 オレがそう決心すると、図ったかのようにセリオとちびが買い物を終えてやってきた。

「――お待たせしました」
「しました〜」

 おせえ、と喉まで出かかって、言うのをやめた。
 なんか、セリオもちびもえらくうれしそうだったから。
 水注すのもなんだしな。

「欲しい物は買えたのか?」
「――はい」
「ばっちりです〜」

 なんかよくわからんが、いいらしい。
 それじゃあ、と手芸品コーナーを後にして、食料品売り場で夕飯の材料を買って家に
帰った。
 あー、腹減ったぜ。
 
 

 それから10日くらいしたある日。
 残業で遅くなった夕飯の後、セリオとちびがなにやら包みをよこした。
 綺麗にラッピングされ、リボンがかけられた包み。
 文庫本サイズがひとつ、豆粒みたいなのがひとつ。

「――バレンタインデーのチョコレートです。お口に合うと良いのですが」
「食べてみてください〜」

 バレンタイン?
 ああ、そういや明日だっけか。
 2人してわざわざ用意してくれたってのか?
 オレのために。
 しかもちびのはホントに豆粒みたいな大きさの包み。
 こんなもの売ってるわけないから、自分で何とかしたんだろうな。
 ちくしょう、うれしいじゃないか。
 まさかの2人の行動に、ちょっとだけ感激しつつ、まずはセリオの包みを開けた。
 箱の中には一口大のチョコが入っていた。
 パクリ、と口の中へ。
 ほろ苦いビターチョコの味が口の中に広がっていく。
 甘すぎず苦すぎず、オレにとってちょうど良い甘さ。
 甘党でないオレが思わずもうひとつ手を出したくなるような、そんな逸品だった。

「――明日は出張でマスターはお留守ですから、今日お渡ししました」

 そういやそうだった。
 まだなんにも準備してねえや。
 きっとセリオがやってくれてるんだろうけど。

「わたしのも食べてみてください〜 びっくりしますよ〜」

 ちびが包みをオレに差し出す。
 是非もない。
 包みを受け取り開けようと……開かない。
 小さすぎてうまく開けられない。
 下手に力を入れるとつぶしかねないし。
 むー。
 悪戦苦闘した挙句、結局ちびに開けてもらった。
 なんかくやしい。
 ちびの――恐らくお手製の――チョコレートが目の前に置かれていた。
 包みが豆粒大なら、チョコはごま粒程度。
 まとめて全部パクっと平らげても良いのだが、そんな無粋な真似はしたくない。
 せっかく作ってくれたんだし。
 ちょっと苦労しつつ、一粒チョコをつかんで口の中へ。
 ほわっとした甘味が一瞬舌の上ではじけ、口の中へ溶けていった。
 お、うまいじゃないか。
 どれどれもうひとつ。
 調子に乗って2粒目を口に入れて数秒……
 うがごはぁ。
 舌に鋭い痛みが走った。
 まるで舌の上で何かがはじけるようなそんな痛み。
 な、なんだ、これ?
 余りのことに目を丸くしていると、ちびがえへへと舌を出していた。
 んにゃろ、やりやがったなぁ。

「だからビックリするって言ったじゃないですか〜」

 ちびすけはそう言うと、脱兎のごとく逃げ出した。
 ええい、逃がすかっ。
 ちびに伸ばした手が空しく宙をつかむ。
 空振り。
 まてまてまてーっ。

「あうあうあう、待てといわれて待つ人はあまりいないです〜」

 ちびすけはそう言うと、セリオの影に逃げ込んだ。
 セリオがこっちを見つめている。
 うー、わかったよ。
 大人げなかったよ。
 だからそんな目で見るなよ。
 くそー、オレの負け。

「――いたずらもほどほどにしてくださいね」
「はいです〜 ごめんなさいです〜」

 おいおい、謝る先はセリオじゃなくてオレだろうが。

「――と言うことですので、許していただけませんか? マスター」

 ほいほい、セリオがそう言うなら仕方あんめえ。
 ところで、あのチョコなにが入ってたんだ? 舌の上で爆発したけど。

「えっと〜 ドンパッチのおっきなかけらをチョコでコーティングしたんです〜」

 ……なるほど。痛いわけだ。
 今でもちょっとヒリヒリする。
 ふう、セリオの入れてくれた熱いお茶がしみるぜ。
 セリオのチョコとちびすけのチョコをもうひとつずつ食べて、のこりは冷蔵庫にしまう。
 一度には食べきれないし、食べきっちゃうのももったいない。
 ゆっくり味わいながら食べることにしよう。
 なんたって、セリオとちびのくれたチョコレートなんだから。
 
 

 チョコレート絡みのドタバタが一段落したところで、セリオが紙袋をこっちによこした。
 ん? なんだろう、これ。

「――開けてみてください」

 どれどれ……
 ガサゴソ。
 お、これは。

「――明日行かれるところはかなり寒いそうですので、マフラーを編んでみました」

 くー、手編みのマフラーとは泣かせるねえ。
 生成りの白をベースに青いライン。
 仕事で使うにはちょっとカジュアルすぎるか?
 まあ、気にしないで使うことにしよう。
 なんてったって、セリオの手編みのマフラーなんだから。

「ちなみに色はわたしが提案しました〜」

 ちびが”ハイ”とばかりに手を挙げて言う。
 お、なんだおまえもマフラー編んでもらったのか?

「はい〜 色違いのおそろいです〜」

 ちびの首に黄色いラインのマフラー。
 ご丁寧にちび用の小さいサイズになっている。

「――ちなみにわたしもおそろいです」

 そう言ったセリオの首には、赤いラインのマフラー。
 確かに3人おそろいだな。
 赤に黄色に青。
 これで緑とピンクがいれば戦隊ものの出来上がりっと。
 ……バカなこと考えてないで明日の準備をしよう。

「ありがとう、セリオ。お陰で凍えずに済みそうだ。ちびもありがとな」
「――いえ」
「えへへ〜」

 オレの礼にうつむくセリオ。喜ぶちびすけ。
 今度3人でこのマフラーして出掛けような。
 
 

 次の日。
 飛行機で一路北へ。
 到着した支社でミーティング。

「いやー、お疲れ様です。寒いでしょう? こっちは」
「ええ、噂に違わずって感じですね」

 出迎えた担当の人が労ってくれた。

「マフラー、暖かそうですねえ。さしあたり彼女の手編みとか?」
「いや、まあ、そんなところです」

 首に巻いたマフラーを見て、そんなことを言う。
 そんなに目立つか?
 マフラーを取りコートを脱いでミーティングルームへ。
 打ち合わせを始めると、事務担当のセリオがコーヒーを持ってきてくれた。

「――どうぞ」

 一部の隙もない完璧な動作。
 もっとも見慣れた動作でもある。
 うちのセリオの方が、もうちょっと動きが滑らかな気がする……って親の贔屓目って
のはこう言うのを言うんだろうな。
 親子ってわけじゃないが。

「あれもねえ、もうちょっと人間臭いといいんですけどねえ。こう、なんて言うか、
バレンタインデーに義理チョコ配るとかねえ。やっぱり、ロボットってことなんでしょう
かねえ」

 支社の担当のおっちゃんは、事務セリオの後姿がドアの向こうに消えるとそう嘆いた。

「……そんなことないですよ」

 小さな声でそうつぶやいてみる。

「え?」
「あ、いえなんでも。で、今日の話の内容なんですけど……」

 うん、そんなことないんだよ。
 オレの視線の先に、お手製のマフラーが下がっていた。
 

fin
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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たわごと

へたれSSその2です。
調子に乗って書いてみました。
わざわざ読んでくれたみなさま、ありがとうございました
昼休みに書いたので前のより短めです。
余り暴走もしてないし、えっちくもないです。
だから面白味に欠けるかもしれません。
期待した人、いたらごめんなさい。
最後まで良い対戦であることを祈りつつ。
それでは。