こなゆきのひ
 
 

しんしんと冷え込む冬の日。

朝から買い出しに出かけました。
 

一通り欲しいものをそろえたら、もう夕方。

そろそろ帰る時間です。
 

帰り道を歩いていると、空から白い綿帽子が、ひとつ、ふたつ。

・・・初雪。
 

あっと言う間に、粉雪があたりに白いベールをかけていきます。

わたしの身体にも、粉雪がいくつも降りてきます。
 

思わず立ち止まって、空を見上げるわたし。

不思議な、なぜだかなつかしい気持ちになります。
 

ああ、そうだ、・・・思い出しました。

わたしが初めて雪を見たのも、こんな寒い夕方でしたっけ。
 

初めての雪に はしゃぐわたしを、

マスターはとてもとてもやさしい眼で見つめて下さいました。
 

今でも、昨日のことのように思い出されます。

あの日の雪の白さ、指先の冷たさ、そして瞳のやさしさを。
 

寒くないか、と、マスターはわたしを自分のコートに

入れて下さいましたね。
 

とても、暖かかった・・・
 

わたしは空を見上げてつぶやきます。

マスター、わたしは元気です、と・・・
 
 
 

カランコロン

「遅くなりました〜」

「今日はマスターの好物の焼豚饅頭があるんですよ〜」

「今、暖めますからね〜」

遅れたことをとがめもせず、にこにこと迎えてくれるマスター。
 

空の彼方の人。

今、目の前にいる人。
 

どちらもわたしには大切なご主人様(マスター)だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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