えんらい
 
 

夏の夕暮れ。
マスターと買い出しに出た帰り道。

遠くの空がにわかに暗くなったかと思ったら・・・

パッパッパッ

暗くなった雲が急に光りました。
まるで大きなフラッシュを炊いたみたいに パッパッパッと。

マスターがずいぶん派手な電飾だと言っています。
・・・・違います。きっと。
 

パッパッパッ
あ・・・ また。

今度はマスターにもわかったみたいです。
わたしも 見逃しませんでした。

暗い空を切り裂くような 光の筋を。
天の雷(いかずち)を。
 

思わず立ち止まって、見入ってしまいました。
マスターも一緒に立ち止まっています。

遠くで光る稲光。
幾条もの光の矢。

不思議ですね。

稲妻は あんなに激しくて 恐ろしくて、
でも こんなにも強く 心を魅き付けて止まない。
 

・・・・
・・・・

どれだけの時間見入っていたのでしょうか?
5分?10分?それとも・・・

不意に視界の中に現れたバスが、
わたしたちを現実へと引き戻してくれました。

遠くからはかすかに雷鳴の声。
少しずつ雷が近づいてきているようです。

そろそろ帰り時。
バスに乗って 家を目指します。
 

ある夏の夜の できごとでした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

あとがきへ。