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ひとりのよるは

 

マスターが町内の寄り合いに出かけた 一人きりの夜

そんな夜は オルゴールの音色に聞き入ります
 

ゆっくりとネジを巻くと流れ出す 穏やかなしらべ

今日みたいな夜にぴったりの そんな音色
 

グラスの中に入ったオルゴールは 派手ではないけれど

独特で なぜだか懐かしい音を奏でます
 

何度聞いても 同じように聞き入ってしまうのは

それがオルゴールの音色 だからでしょうか?
 

   いつもと同じように流れる しらべ

   いつもと同じように口ずさむ ハミング
 

オルゴールの音が グラスの中で柔らかく響いています
 
 
 
 

ゼンマイのねじを 何度も巻き直して

その度に 音色としらべに聞き入って
 

気がついたら もう遅い時間

だから今日はこのひと巻きで 終わりにします
 

   変わらないしらべ

   遠い昔に作られた曲
 

最後の一音が鳴り響いて その音が空気に溶けていくまで

ずっと その余韻に浸っていました
 
 
 
 

オルゴールを元の場所に戻して ベッドに腰掛けます

静けさを取り戻した部屋の中に残る オルゴールの余韻
 

まだ部屋の中に オルゴールの音が響いているような

そんな 不思議な感じがします
 
 
 
 

夜も更けて来て マスターはまだ帰って来ません

きっとみなさんに引き留められて 朝まで……ですね
 

仕方ないので 先にお休みすることにします

今日は このオルゴールの余韻につつまれながら
 

おやすみなさいませ……
 

fin20000313


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