あるひのあさ
 
 
 
朝 目覚ましが鳴る前に目を覚ます 
マスターはまだ 眠っている 

朝の日課
いつものように結うポニーテール

お客さんの前で恥ずかしくないように
そして何より マスターに笑われないように

トレードマークの淡い空色のリボンを結んで 鏡をのぞき込む
鏡の中で ねむけ眼のわたしが微笑んでいる


朝ご飯
お味噌汁の具は何にしようかな?

今日の仕事
お客さんは何人くらい来るかな?

昨日のこと
そういえば鋏を研いでないな

明日のこと
せっかくのお休みだし秋桜を見に行きたいな

過去のこと
このまえ流れ星が沢山降ったのはいつだったかな?

そして 未来のこと
この幸せな時間はいつまで続くのだろう?


時には自分の永遠とも思える時間が疎ましく思えることもある


横で眠るマスター
わたしはいつか永遠のお別れをしなくてはいけない

わかっている それは避けれないこと
限られた時間を生きるものにとって 必ず訪れる瞬間

わたしはそれを見届けなくてはいけない
十数年前に経験した辛く悲しい出来事を もう1度見届けなくてはいけない

ふ と鏡を見る
鏡の中のわたしはちょっとうなだれた顔


やめよう 先のことであれこれ悩むのは
やめよう そうマスターは言っていた

今あるこの瞬間を懸命に過ごそう
かけがえのないこの時間を大切に過ごそう

それがわたしにできる精一杯のことだから


「おはよう椎那」
目を覚ましたマスターがわたしに微笑みかけてくれる

「おはようございます。マスター」
鏡の中のわたしが微笑んでいた

fin981025
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椎那のお話の番外編、その1になります。
椎那もこんなことを考えることがあるんだ、と思っていただければ
と思います(^^;

そもそもこのお話はANGELさんのHP『恋の館(現 夢幻)』の
裏門に、椎那のCGと一緒に掲載していただいていたものです。
今回、裏門の改装に伴ってCG、文章が変わりましたので、
ANGELさんの許可を頂いて、夜桜に転載してもらいました。
ANGELさん、桜木さんに深く感謝いたします。

更新履歴
990803夜桜アップのために若干改訂

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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