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「セリオお姉ちゃんなんか、きらい。ふん」

 これが最近のゆきちゃんの口癖です。
 なにかにつけてわがままを言っては、セリオに叱られ、最後に決まってこう言うのです。
 その度にセリオは困ってしまいます。
 ゆきちゃんに嫌われてしまうのは悲しいこと。
 でも、ゆきちゃんが間違ったことをしたり言うことを聞かなかったりした時は、ビシッと叱るようにお母さんに言われているのです。
 『厳しいかもしれないけど、後々困らないように最低限の常識やモラルを小さいうちにしっかりしつける』、と言うのが
ゆきちゃんの家の育児方針だからです。
 今日も今日とて、わがままゆきちゃんにセリオが翻弄されています。



Someday Sometime in Sometown. いつかどこかの町で8
セリオお姉ちゃん、きらい


 ある日ある時ある町でのお話です。
 そこにはめがねが似合う優しい、でもちょっぴり影の薄いお父さんと、いつも朗らかで明るいパワフルお母さん、
来年は幼稚園、成長著しい一人娘のゆきちゃん、赤いロングヘアに特徴的な耳センサーのメイドロボット、セリオが暮らしていました。
 そう、ミリオンセラーメイドロボのセリオです。
 お父さんとお母さんにとってセリオは我が子同然。
 家族の一員として扱っています。
 ゆきちゃんも生まれた時から一緒にいるセリオと大の仲よし。
 『セリオおねーちゃん』と慕っています。
 ……いえ、慕っていた、といったほうが良いかもしれません。
 どうして過去形かと言うと、最近ゆきちゃんはことあるごとにセリオに口ごたえをするからです。
 ゆきちゃんが三歳になり半年くらい経った頃から、ゆきちゃんのわがままが目立つようになりました。
 お片づけ、お出かけ、ご飯を食べる時、夜寝る時……数え上げるとキリがありませんが、なにかにつけわがままを言っては
セリオやお母さんに怒られ、それに口ごたえをしてさらに怒られ、仕舞いには泣き出してしまう、そんな毎日なのです。

 ある日のこと、セリオとお母さんはいつものようにお夕飯の準備をしていました。
 ゆきちゃんは、お茶の間で色鉛筆片手にぬり絵の真っ最中。
 お膳の上にぬり絵の本や色鉛筆を広げて、色塗りに励んでいます。
 ぬり絵はゆきちゃん的最近のマイブームなのです。

「――ゆきちゃん。ご飯ができましたから、お片づけしてください」

 セリオが台所から顔だけ出して、ゆきちゃんに声をかけます。

「はーい」

 すぐにお茶の間のから、ゆきちゃんの元気のいい返事が聞こえてきました。
 さあ、夕食の時間です。セリオはお台拭きを用意するとお膳を拭きにお茶の間へ行きました。
 お茶の間に一歩入ったセリオはあたりの様子を確認すると軽く目を伏せ、こう言いました。

「――ゆきちゃん。お片づけはどうしたのですか?」
「まだー」

 お茶の間は先ほどと全く変わりない有様。
 ゆきちゃんがぬり絵と色鉛筆を広げたままです。

「――さっき『お夕飯だから片づけてください』って言いましたよね?」
「うん」
「――なぜお片づけを始めていないのですか?」
「だってー」

 ゆきちゃんはセリオを見ようともせず、ぬり絵を続けています。

「――『だってー』、じゃないです。もうお夕飯はできていますよ。すぐ片づけてください」

 セリオは腰に手を当てゆきちゃんの前に仁王立ち。
 でも、ひよこ柄の黄色いエプロンではちょっと迫力に欠けるかもしれません。

「でもぉー」

 ゆきちゃんはセリオを見上げると、口を尖らせて言いました。

「――『でもー』、なんですか?」
「あのね。あたしはぬり絵がやりたいの」

 抵抗するゆきちゃん。

「――それじゃ、お夕飯は食べないのですか?」
「食べるよー。おなかぺっこぺこー」
「――でしたらすぐに片づけてください」
「えー、これ塗ったらぁー」

 そう言うとゆきちゃんは絵を塗り始めました。

「――ダメです。早くしないとお夕飯が冷めてしまいます」

 セリオがゆきちゃんから色鉛筆を取り上げました。

「ぶー」
「――ぶーたれてもダメなものはダメです」
「もー、セリオお姉ちゃん言わないで!」

 ゆきちゃんがセリオの言葉を遮るように言いました。

「――言わなかったらちゃんとお片づけしてくれるのですか?」
「うーん…… わかんない」

 えへっ、と笑うゆきちゃん。表情がころころ変わります。

「――『わかんない』、じゃ困ります。とにかくすぐに片づけてください。私やお母さんと約束しましたよね?
ご飯の準備ができたらお片づけしてお手伝いすると」
「もう、セリオお姉ちゃんうるさいー」

 畳み掛けられたゆきちゃんが言い返します。
 結構涙目。

「――うるさくて嫌ならすぐに片づけてください」
「やだー、これ紅く塗るのー」
「――ダメです」
「やだったらやだー」
「――ダメったらダメです」
「やだったらやだったらやだー」
「――ダメったらダメったらダメです」
「もうー、セリオお姉ちゃんなんか、きらい。ふん」
「――嫌いで構いませんから、お片づけしてください」
「ふんだ」

 ゆきちゃんがそっぽを向きました。

「――そっぽ向いてもダメです」
「ふーーーんだ」

 横を向き、頑として言うことを聞こうとしないゆきちゃん。
 こうしたゆきちゃんとセリオのバトルが多い時は日に幾度となく繰り広げられるのです。
 もちろんセリオが片づけてしまえばあっという間です。
 でも、それでは意味がないのです。
 色鉛筆を使っていたゆきちゃん自身が片づけないと実にならないからです。
 そうは言っても、お決まりの『セリオお姉ちゃん、きらい』が出てしまうとセリオにはもう打つ手がありません。
 今日もセリオはどうしたものかと困ってしまいました。


「ゆきちゃーん、お片づけできたー?」

 見かねてお母さんが台所から口をはさみました。

「まだー」
「お片づけできないんならぬり絵も色鉛筆も捨てるわよー」
「わー、やだー、捨てないでー」

 お母さんのいきなりの最後通牒に慌てるゆきちゃん。

「じゃあ、すぐ片づけて」
「それもいやー」

 ゆきちゃんの大きな目から大粒の涙がぽろぽろと落ち始めました。

「泣くくらいならちゃんと片づけなさい」
「やだー、どっちもやだー」

 大声で泣き出すゆきちゃん。
 ますますセリオの手には負えない状況です。
 でもお母さんは容赦がありません。

「ほら早く」
「うー、お母さんきらいー」
「嫌いでもなんでもいいから早くしなさい」
「やだー」
「ほらほら」
「ぶーー」

 あくまで抵抗するゆきちゃん。

「――ゆきちゃん、私と一緒に片づけましょう」

 泣き出したゆきちゃんを見て、セリオが助け舟を出しました。

「もう、セリオお姉ちゃんはあっち行って、きらいなんだからー」

 セリオに叱られ、お母さんに追い討ちをかけられ、すっかりふてくされモードのゆきちゃん。
 セリオが差しのべた救いの手をはねつけてしまいました。
 ゆきちゃんの態度にちょっと、いやかなり寂しそうなセリオ。
 誰も見ていなかったら床に『の』の字を書いていたかも知れません。
 お母さんはため息をつくと、ゆきちゃんにこう言いました。

「ゼロになる前に片づけなさい。五、四、三……」
「わーっ」

 お母さんにカウントダウンされ、ゆきちゃんは慌ててぬり絵を片付け始めました。
 セリオが横から手伝います。
 このカウントダウンを無視すると本当に捨てられちゃうのです。
 過去に実績もあります。

「片づいた?」

 一呼吸置いて台所からお母さんがやって来ました。

「ほらー、やればできるじゃないの」

 お母さんは片づいたお茶の間を見て、ゆきちゃんの頭をなでながらそう言いました。

「ごめんなさいー」

 それまで黙って片づけをしていたゆきちゃんが、お母さんの足にしがみついて大泣きし始めました。
 これもいつものパターンです。
 わがままゆきちゃんがセリオに叱られてふてくされ、口ごたえし、最後のお母さんに怒られて大泣きする。
 そんなことがここ数ヶ月ずーっと繰り返されているのです。

「うん、わかったから泣くのストップ」
「……うん」

 目をうさぎのように真っ赤にしたゆきちゃんがうなずきます。

「さ、ご飯にしましょ」
「うん」

 ゆきちゃんはうなずくとおはしを取りにお台所へ行こうとします。

「ゆきちゃん、ちょっと待って。誰かに謝るの忘れてない?」

 お母さんはゆきちゃんの襟首をつかむとそう言いました。

「忘れてないよー」

 ゆきちゃんが答えます。

「忘れてるわよ。セリオお姉ちゃんに謝んなさい」
「でもー」

『そもそもセリオお姉ちゃんが片づけを急かさなければお母さんに怒られることもなかった。
だからセリオお姉ちゃんが悪いのであって、あたしはセリオお姉ちゃんには謝らなくてもいい』、
ゆきちゃんの言い分は大方こんなところです。

「なにいってんのぉ。ゆきちゃんがセリオの言うこと聞いてちゃんと片づけてれば、こんな風に怒られなかったんでしょ?」
「もう、お母さん言わないで!」
「謝んなさい」
「やだ」
「謝るの」
「やだー」
「そうやってわがまま言う子はお夕飯食べなくてもいいわよ」
「やだー、謝るのはやだー、お夕飯食べないのもやだー、どっちもやだー」

 ゆきちゃん、また泣き出してしまいました。

「いいわ、放っておいてご飯の準備をしましょう」
「――……はい」
「やだー、あたしも支度するー」

 ゆきちゃんは泣きながらお母さんの足にしがみつきました。

「じゃあ、セリオお姉ちゃんに謝んなさい」
「ぶー」

 ゆきちゃんがお母さんをにらみつけます。

「謝るの? 謝らないの?」

 お母さんがにらみ返します。

「……あやまる」

 お母さんには敵いません。ゆきちゃんは謝ることにしました。

「……セリオお姉ちゃん、ごめんなさい」

 お母さんの方に頭を下げるゆきちゃん。
 本当は謝りたくないんだぞー、と言う感じです。

「セリオはこっちにはいないわよ」

 そんなゆきちゃんに、すかさず突っ込むお母さん。
 ゆきちゃんの考えなどお見通しです。

「……セリオお姉ちゃん、ごめんなさい」

 お母さんに言われて観念したのか、ゆきちゃんは今度はセリオの方を向いて謝ります。

「――なにが『ごめんなさい』なのですか?」

 口をギュッとつぐんでうつむくゆきちゃんに問いかけるセリオ。
 お母さんにそう聞くように言われているのです。

「……お片づけしなくて、ごめんなさい」
「ごめんなさいーーー」

 今度はセリオの足に抱きついて泣きじゃくるゆきちゃん。

「――はい」

 セリオはゆきちゃんの頭に手の平を載せ、ゆきちゃんを見ながらうなずきました。
 どうやらようやくお夕飯になりそうです。


 お夕飯も済み、ゆきちゃんはお寝むの時間です。
 ゆきちゃんは生まれてからずーっと、セリオに添い寝をしてもらっていました。
 でも、ゆきちゃんがわがままを言うようになるのと相前後して、お母さんが添い寝しないと寝なくなってしまったのです。
 セリオが添い寝をしようとすると「いやー」と言って逃げ出す始末。
 今日もゆきちゃんはお母さんに添い寝をしてもらっていました。
 しばらくして、ゆきちゃんが眠りに落ち、お母さんがお茶の間に戻ってきました。

「はい、お疲れ様」
「――お疲れ様でした」

 ゆきちゃんとのバトル、本日分終了です。

「それにしてもあのおバカちんは相変わらずねー」
「――そうですね」
「ちょうど第一次反抗期だとは思うんだけどね」
「――はい」

 お母さんはそう言うとセリオの入れたお茶を一口すすりました。

「うん、セリオの煎れてくれたお茶はおいしいわー」

 お母さんの顔がほころびます。

「よそんちよりはずっとマシって話だけど、こう毎日じゃ疲れちゃうわね」

 お母さんが昼間のゆきちゃんの所行を思い出して苦笑いをしています。

「――公園の向かいのこうたくんはなにかあると道の真ん中でひっくり返って泣きわめきますし、
斜め向かいのはるかちゃんは気に入らないことがあると誰彼構わず向こうずねを蹴ろうとします」
「まあ、それに比べたら大分マシかな……」
「――はい」

 お母さんはお茶をすすると軽くため息をつきました。

「――それにしても、すっかりゆきちゃんに嫌われてしまいました」
「あらそう?」

 お茶の湯飲みを手に、セリオを見るお母さん。
 うつむき加減のセリオがうなずきます。

「――私の言うことはほとんど聞いてくれませんし、添い寝も嫌がられてしまいます」
「まあ、そう言う時期なのよ」

 お母さんが笑います。

「――そうなのでしょうか?」

 セリオが問いかけます。

「自我が出てきたってことだしね。順調に育ってるって言う証拠よ」
「――自我が芽生えたと言うことは、好き嫌いを主体的に判断していることになります。
つまり、私は本格的に嫌われていると言うことです。私はゆきちゃんに嫌われるようなことをしたのでしょうか?」

 マリアナ海溝よりも深く考え込んで沈んでいくセリオ。

「んー、そうね…… 強いて言うならば、ゆきちゃんがしようとしていることにダメ出ししてるわねえ……」

 お母さんは湯飲みをお膳に置くと、少し考えてそう言いました。

「――でもそれは、ゆきちゃんのためを思えばこその……」
「親の心子知らずと言うからね。ゆきちゃんには、自分のしたいようにさせてくれない人はみんな『きらい』なのよ。
それはお父さんもわたしも一緒」

 お母さん、そう言って苦笑いです。
 お父さんもセリオと同じように『お父さん、きらい』とゆきちゃんに言われて落ち込んでいるのです。
 セリオと違ってゆきちゃんと接する機会が少ないためか、受けたショックはセリオよりも大きかった様子。

「まあ、そのうち感謝されるかもね。私もそうだったって話だし」
「――そうですか」

 先ほどよりもうつむき加減が増したセリオ。
 そんなセリオを見て、お母さんがほっぺをかきながら言いました。

「ちょっと言い過ぎちゃったかな? そうまで真剣に悩むことじゃないわよ」
「――そうですが、ゆきちゃんに『きらい』と言われるのは悲しいです」
「セリオは、あの子が本気でセリオを嫌ってるって思ってる?」
「――はい」

 うなずくセリオを見て、お母さんが首を振りました。

「……セリオもおバカちんねえ」

 お母さんは苦笑いしながらこう言いました。

「それじゃ、お出かけする時にゆきちゃんが真っ先に手をつなごうとするのは誰?」

 セリオはお出かけに行く時の様子を思い浮かべました。
 お家を出て駅に向かって歩き始めると、ゆきちゃんは『手をつなごー』と言って一番に……セリオの手を取ります。

「――……私、です」
「でしょ?」
「――はい」
「洗濯物片付けてる時に、誰の背中に真っ先に乗ってくる?」

 今度は洗濯物をたたむシーンを思い浮かべるセリオ。
 向こうからやってきたゆきちゃんは『おんまさーん』と言って真っ先に……セリオの背中に乗ってきます。

「――……私、です」
「ね?」

 お母さんが、ほれ見たことかと言う感じの笑顔をセリオに向けます。

「なんやかんや言ってもね。あの子はセリオのことが好きなのよ。それは間違いないわ。そうでなけりゃ手をつないだり
背中に乗ってきたりなんてしないでしょ?」
「――……はい」
「それにね」
「――はい」
「さっき寝る時にゆきちゃんに聞いてみたの『お母さんはすごく怒るからゆきちゃん、お母さん嫌いになったでしょ?』って。そしたらね」
「――はい」
「あの子は『お母さんのこと好き』って言ってたわ。それからね、こんなことも言ってたわ」

 一呼吸置いて、お母さんがゆきちゃんの言葉をセリオに伝えます。

「『あたしはね、本当はセリオお姉ちゃんのことが好きなのよ』って。『怒ってるセリオお姉ちゃんは恐くてきらいだけど、
そうじゃないセリオお姉ちゃんは優しいから大好き』って」
「――」
「ね? セリオ自身のことを嫌っている訳じゃないでしょ?」
「――はい」

 セリオはとてもうれしくなりました。
 それは普通のうれしさとは違う、今までに感じたのことのないうれしさでした。
 肩の力がすーっと抜けて、思わず微笑んでしまうような、そんなうれしさでした。

「ま、そう言うことだから。気にせず今までどおりやりましょう」
「――はい」

 お母さんの顔をまっすぐ見つめるセリオ。
 さっきまでのうつむき加減はどこへやら、です。

「――お茶を煎れ直してきます」

 セリオは中身の少なくなったお母さんの湯飲みを持つと台所へ行きました。
 台所でお茶を煎れながらなにやら考え事をしているような様子です。
 お母さんは台所へ行くと、この不器用でニブちんな愛娘の背中をぽんぽんと叩いてあげたのでした。


 次の日のお昼時。
 ゆきちゃんvsセリオの戦いが今日も繰り広げられようとしています。
 ゆきちゃんがテレビに見とれてお昼ご飯をちゃんと食べようとしないのです。

「――ゆきちゃん、ちゃんとご飯食べないとテレビ消しますよ。お父さんと約束しましたよね?」
「えー」
「――口を尖らしてもダメです」
「でもー」

 バトル、開始。
 さて、今日はどの辺で「セリオお姉ちゃん、きらい」が出るのでしょうか?


Fin 

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羅針儀式休暇、掲載時のあとがき
あとがきに代えて
 拙作、「セリオお姉ちゃん、きらい」をご覧いただき、ありがとうございました。
 「いつかどこかの町で」(通称、ゆきちゃんシリーズ)の第八作目になります。
 本シリーズは、普通(?)の家庭にセリオがいて、彼女が子育てに参加したら……を題材に、実体験を交えながら
あれやこれや書いています。
 本文中のゆきちゃん―大体三〜四歳児と言うのは、ようやく自我が出始めて急にわがままを言うようになる頃です。
 お子さんや姪御さん、歳の離れた妹や従妹をお持ちの方はわかるかも知れませんが、すごく良く懐いていた子が
急によそよそしくなったり、「きらい」なんて言うようになります。
 大抵はゆきちゃんのお母さんが言うように、自分の行動を制限されることに対する反発から「きらい」に結びつくわけで、
その人を丸ごと全部嫌いになるわけではないようです。
(「きらい」と言われているにも関わらず、すごーくしつこく構ったりすると、丸ごと全部嫌われてしまうかも知れませんが……)
 とは言え、セリオは名前のとおりセリオですから、言葉を額面どおり受け止めてしまうわけで……
 あのまま放っておくと、行き着く先はきっとノイローゼなんじゃないかな、と思います。
 人間でも「子供が懐いてくれない」と言って育児ノイローゼになったり、乳幼児虐待に走る親が新聞を賑わしているわけで、
セリオにとってのお母さんのような存在や、子育てするもの同士のコミュニケーションが子供を育てる上で大事なんだろうな、
なんて思うのです。
 そうそう、ゆきちゃんのお母さんですが、セリオにアドバイスしたりと、かなり頼もしく見えますよね?
 彼女も彼女なりに色々悩んでいます。
 お母さんの相談相手はお母さんのお母さん、すなわちゆきちゃんのおばあちゃん。
 誰かの助けがないと、一人目をああもあっけらかんと育てることはできないと思います。

 ……と、かなり脱線しましたが、今回のお話はいかがでしたでしょうか?
 よろしければご意見ご感想をいただければ、と思います。
 最後に、読んで下さった全てのみなさん、誘って下さった桜木さん。
 ありがとうございました。
 それと、校正、推敲を手伝ってくれた嫁に感謝です。
 それではまた。


収録にあたって
 拙作をご覧頂きありがとうございました。
 このお話は「いつかどこかの町で」シリーズの8作目にあたります。
 サークル轟天社の同人誌「羅針儀式休暇」に寄稿したお話です。
 大体のことは初出時のあとがきに書いていますので、特に付け加えることもないかなと。

 全国のパパさん。
 奥様はこう言うことに悩みながら子育てをしています。フォローしてあげてくださいね。
 それと、3〜4歳児が「お父さん嫌い」というのはよくあることなので、それで凹んだり、奥さんに当たったり、
お子さんに腹を立てたり手を出したりしないように!
 まあ、こんなところで書いていても仕方のない話かも知れませんけどね。
 
 いつかどこかの町でこんな出来事が起きるその日を楽しみに、それではまた。
 
 
初出 2003.12.30
Web掲載 2010.05.23

 

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