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              石器の思い出
 私の周辺に最も古くからあるものに写真の様な石器がある。 何処の博物館に
行ってもごろごろしている数千年前の磨製石器の石斧の先端部分と思われる。 

 今から六十五年以上前、小学校四年か五年生の頃、同級生のM君から貰った
ものである。  霧島連山の中の夷守岳麓にある十数軒の集落に住む彼によれば、
近所のオバサンが沢山持っていて一つ貰ったものだと云う。  因みに私の住む
村は三十軒弱の集落で小学校は全校で七十人程の分校だった。  同級生は
十名程だったが、中学校に行くといきなり百五十人の同級生となり、 M君とは
クラスも分れ家も遠く離れていたので彼との付合いもなくなった。 その後二十代の頃、
風の便りで事故か病気か分らぬが他界したと聞いた。 

 一方石器は私が学生時代、実家で祖父の遺品整理をした時、箪笥から出て
来た由で、祖母か母が私の物だと覚えていたらしく引渡された。 それまで
この石器の事はすっかり忘れていたが、学校から帰ると何時も話相手になってくれた
祖父が保管して呉れたものと思う。 大して邪魔にもならないので学生寮に
持込んだが、特別大切にしていた記憶もない。 

 それ以後会社の寮、結婚してアパート、賃貸団地、海外転勤に伴い荷物は妻の
実家の物置に、帰国後戸建住宅、 そして現在のマンションと六回程引越しをして
いるが、何故か紛失せず今も私の書棚の中にごろんと転がっている。  
 この石器を見るとろくにお礼も言わずに小学校卒業以来別れたM君の事が
思い出される。  娘達に引継ぐような物でもなく、郷里の小林に民族史料館の様な
ものが出来て寄贈を募るような事があれば直ぐにでも提供したい。 
果して間にあうかどうか。

   霧島の縄文人に磨かれて

           役割終えて幾千年か

           120mm() x 70mm() x 35mm()