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                   漢詩について
  詳細はいずれページを設け掘り下げたいと思いますがここで簡単に触れておきます。

漢詩の形

漢詩はもともと中国の詩ですが、漢文で書かれたものを日本語の訓読みにし更に詩吟では節をつけて
読みます。 漢詩の歴史は2500年以上前までさかのぼりますが、今から1300年ほど前の唐の時代に
特に盛んになり、形も整えられました。 起、承、転、結の各一行ずつの句からなる四行の詩を絶句といい、
一句の文字(漢字)五つで構成するものを五言絶句、七文字のものを七言絶句といいます。
 行が六行とか八行になるものは律詩といい、やはり五言と七言があります。 唐時代以前の漢詩を
古詩
と言っているようです。 又絶句では必ず起句、承句、結句では行末の漢字が韻を踏む
(音読みで同じ発音になる)ことが決められています。 次に例を一つ揚げます。

春夜   蘇軾        読み下し文
春宵一刻直千金   春宵(シュンショウ)一刻直(アタイ)千金
花有清香月有陰   花に清香(セイコウ)有り月に陰(カゲ)有り
歌管楼台声細細   歌管楼台(カカンロウダイ)声細々(コエサイサイ)
鞦韆院落夜沈沈   鞦韆院落(シュウセンインラク)夜沈々(シンシン)
註 鞦韆・・ぶらんこ 院落・・中庭  楼台・・3階以上の建物

これは七言絶句の例ですが一行が七文字四行で構成されています。 起句、承句、結句それぞれの
行末の文字、金(KIN)、陰(IN)、沈(CHIN)と音読みだとINという同じ発音になり、韻を踏んでいます。 
しかし右のように日本語で訓読すれば韻は全く関係ありませんね。 多分中国語で読むと響きが
美しいのかもしれません。

漢詩の訓読
有名な漢詩はほとんど訓読(読み下し)で表示されており、漢文を直接読むことはありませんが、
訓読のための文法について少し説明します。 詩ですから通常の漢文のように難しいものは少なく、
よく見かけるのは以下のタイプです。

1. 下から返って読む
 上の例で見ると「花あり精香」ではなく「花に清香あり」となり、次の「月有陰」も同じです。 
 漢文では 英語と同じ様に動詞が目的語や補語の前にあります。

2. 否定形 「不」とか「莫」とかあれば次の漢字の否定になります
 春眠不覚暁  春眠 暁(アカツキ)を覚えず  (春暁 孟浩然 起句)
 憑君莫話封侯事 君に憑(タノム)話す莫(ナカ)れ封侯の事 (己亥歳 曹末 転句)

3. 一つの字を二回読む 未ダ・・セズ、将(マサ)ニ・・セントス、須(スベカ)ラク・・スベシ等
 未覚池塘春草夢  未だ覚(サメ)池塘春草(チトウシュンソウ)の夢 (偶成 朱熹 転句)
 李白乗舟将欲行  李白舟に乗って将にかんと (贈汪倫 李白 起句)
 君勧須惜少年時  君に勧(ススム)須らく惜しむべし少年の時 (金纏衣 杜秋娘 承句)
 
4. 「教」、「使」 など使役をあらわし、 ・・ヲシテ・・セシムとなり、「不教」は・・ヲシテ・・セシメズと
  なります
  不教胡馬度陰山  胡馬をして陰山(インザン)を度(ワタ)らしめず (従軍行 王昌齢 結句)

5.「豈」 などは反語になります 豈(アニ)・・ヤまたは・・カ (そうだろうか否そんなことはない)
  好文豈謂無威武  好文(コウブン)(アニ)威武無しと謂(イ)わん
  (弘道館賞梅花 徳川景山 転句)

他にもあると思いますが1、2が頻繁に使われています。
読み下し文では否定の「不」とか使役の「教」など送りがなで書くため、七言のはずなのに漢字が
五つとか六つで表記されます