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主な研究開発成果(1980〜1989年)


国際間パソコン通信ネットワークの構築(1989)
研究 日本の建設業の大手企業では海外からの工事を請け負うこと
もあり、本社や技術部門との情報交換の必要性が増していて
パソコンの普及と相まって国際間の通信を試みることとなっ
た。当時、香港の事務所からの要請もあり、パソコン通信と
いう通信手法を用いて実験することとなった。パソコン通信
はホストコンピュータとパソコンとの情報のやり取りを高速
に処理する新しい技術で、そのネットワークの構築と通信実
験を行った。実証実験は事前の準備がよかったせいで、1回
で成功させることができた。現在のインターネットの普及す
る前のネットワーク技術であったが、今ではパソコン通信と
言う言葉さえ聞かれなくなった。

高度情報化対応知的オフィス空間構築手法の調査研究(1987)
研究 コンピュータの一人一台化、その小型化、ネットワーク化が
急速に進む中、従来のままのオフィスではない高度な情報化
に対応した知的なオフィス空間が求めらるという視点から海
外の進んだ最先端のオフィスの事例などを調査した。それら
を基に将来の理想とする知的オフィス空間を明らかにし、既
存のオフィス空間をどのように新しいオフィス空間い作り変
えるかといったいくつかの空間構築手法の提案を行った。

業務分析に基づくOAシステム設計開発手法の研究(1986)
OAシステム設計開発手法 OA化の進展により業務の効率化が進む一方、その弊害も散見
された。業務分析を怠ってシステム化したことによって、利
用者と開発者との間の溝が深まり、システム引渡し後のクレ
ームも少なからず見られるようになった。そこで、まず、OA
機器の利用状況の調査を実施し、その結果、利用者がそれに
あったソフトや機器があるにも関らず知識不足のためにミス
マッチが起こっていたことなども分かり、機器の配置の見直
しや利用方法の指導などで、いくつかの問題を解消すること
ができた。また、現状の業務分析のための調査シートなどを
新たに開発し、OA化以前に改善すべき作業の抽出などを通し
て、システム化への重要な調査分析手法を確立することがで
きた。それらは調査・分析・設計・製造・評価のシステム開
発の各プロセスに生かせることも分かった。

OA化技術の集大成と幅広い広報宣伝活動(1986)
広報宣伝活動 洗練されたOAシステムとOAオフィスの構築技術を宣伝するた
めに新聞各社、建築関連雑誌、学術論文、パンフレットなど
の多くのメディアを通して広報活動を行った。また、研究所
内にOAオフィスを実現することで宣伝効果が得られ、多くの
見学者が訪れることとなった。見学者とのスケジューリング
会場設営、見学コース案内、概要説明など本来業務以外の仕
事に追われ、忙しい毎日となったが、そうした一連の広報活
動によって、その後、浜松町の東芝や自社ビルのOAオフィス
などをはじめとする多くのオフィスビルや研究施設の受注に
つながった。

SQITの拡張改善とTIRSの開発(1985)
TIRSの開発 デミング賞獲得に大きく貢献したこともあってSQITは広く社
内にその名を広めることができた。そうした中、システムの
利用は端末が設置されている本社各部門と支店までだった。
建設現場はプロジェクトが終わるとなくなってしまうので、
現場への端末の設置が躊躇われていた中、現場の方から多く
の要望が寄せられ、SQITをさらに高度化した技術情報検索シ
ステムTIRSの開発が始った。特に注目される点はタイトル中
の一部の単語からでも検索が可能な機能で、検索に必要な予
備知識なしでシステムを使えることであった。そして、SQIT
は新たな名前を得て進化して行くことになった。

ホストコンピュータによるOAシステムの開発(1985)
OAシステムの開発 プロジェクト管理を中心とする研究所における様々な業務を
支援するOAシステムである。オフィス・オートメーション
が流行った時代のホストコンピュータによるデータベースを
用いた本格的なシステムであり、その後のイントラネット・
システムの基礎となった。

(1)研究管理支援システム
(2)コンサル業務管理システム
(3)業務時間管理システム
(4)予算管理システム
(5)原価管理システム
(6)研究成果資料管理システム
(7)意思決定支援システム
(8)オフィス情報システム
(9)ファシリティマネジメントシステム
(10)図書情報システム
(11)研究者情報システム
(12)研究成果展開システム
(13)お客様応対システム
(14)会議室予約システム
(15)幹部スケジュール管理システム
(16)残業時間管理システム
(17)各種コード管理システム

人工知能AI研究プロジェクト(1985)
人工知能 AIが世界的な流行となって、建築の分野でもその応用ができ
ないかと、AI研究のためのプロジェクトが作られた。この当
時のAIは脳の神経細胞のアナロジーであるニューロシステム
ではなく、脳の思考過程に着目したプロダクションシステム
というもので、A=B、B=C、ゆえにA=Cといった論理構造を
利用して推論を行う手法であった。対象分野の知識を多く入
力すると推論も進化し、よりよい結果が得られるというふれ
込みであったが、知識を入れるたびに答えが変わるというこ
とに、従来の研究者や技術者から疑問が投げかけられた。彼
らはコンピュータの再現性や科学技術における不変性などの
考え方が重要視され、毎回答えが変わることに対しての抵抗
が大きく受け入れが難しかった。調査研究と試行実験などを
通して人工知能の課題してまとめることとなった。

図書情報管理システムの設計開発(1984)
図書情報管理システム 以前に開発した図書情報システムはパソコンによる単独シス
テムで図書室でしか使えないシステムであった。ホストコン
ピュータの導入で端末のあるどこからでも図書情報の検索が
できるようにとの要望からホストコンピュータのデータベー
ス上に新たに構築することとした。これらの開発を通して、
たとえば、検索システムには、検索条件入力−検索結果一覧
表示−詳細表示といった一連の画面遷移あり、また、データ
入力では登録、修正、削除といった基本機能があることが分
かった。図書情報外の検索対象でも同じなので、こうしたプ
ロセスを標準化すれば開発効率を上げることができると気づ
き、システム開発の標準化に取り組んだ。こうした標準化は
利用する側にとっても画面の遷移を予想できるメリットがあ
り利便性が増すことも分かった。標準化は、今後の多くのOA
システムの開発に取り入れ、短期間でのシステム開発に貢献
した。

研究成果発表会の計画実施運営(1984)
研究成果 研究所では年に1〜2度、研究員の成果を所内発表会という形
で開催し、研究員相互の交流を図る目的で実施してきた。し
かし、研究員の成果をもっと社内に使ってもらうべきだとい
う意見が出され「研究成果発表会」という名目で企画計画し
社内の技術部門の人たちに集まってもらい、そうした成果を
広く展開することになった。企画書の作成、成果の募集、本
社への広報、会場の設営、当日の運営などすべてを任され、
その実施となった。発表会は立見席が出るほどの盛況で、評
判は上々、成功裏に幕を閉じた。

NECホストコンピューター導入実施計画プロジェクト(1984)
NECホスト OAブームの最中、NECの本社建設計画が持ち上がり建設各
社はその受注に奔走していて、営業上NECのコンピュータ
の購入が決まったらしいとの報告があった。しかし、本社は
IBMのホストコンピュータと富士通のコンピュータを導入
済みで、そうした事情からNECのコンピュータは研究所で
使ってほしいと本社の情報システム部から依頼があった。プ
ロジェクトが発足し、ホストコンピュータと十数台の端末の
設置からソフト開発、開発後の運用を含め実施計画を策定し
具体的な作業を開始した。OAのソフト作成は情報システムが
担当し、完成したというシステムのひとつであった会議室の
予約システムは使い物にならず苦情の連続であり、クレーム
をつけてもまともなものにはならず、自分で設計したシステ
ムに切替え、ようやく使ってもらえるようになった。これを
契機にOAシステム開発のリーダーをまかされ本格的な開発に
挑むことなる。

清水品質情報管理システムSQITの設計開発(1983)
SQIT TQCが導入され、各所で品質管理活動が行われたが、Tの
総合にあたる総合化の視点が見られないということから、こ
の課題解決のための全社プロジェクトが作られた。約20部署
からメンバーが集められ、研究所を代表して参加することと
なった。品質管理に関する情報を一元的に集めて、それらを
全社で共有できないかという提案がなされ、収集した品質情
報を整理したり検索したりするための分類の必要性が取り上
げられた。そのためにいくつかの分科会が作られ、分類テー
ブルとシステム構築のふたつにも参加することになった。分
類は清水品質情報テーブルSQITとして施設、部位、材料、工
法の4つの視点から建物を分類するファセット分類法を採用
した。対象情報の選定、SQITによる検索方法、データベース
システムの設計開発などを行い、本社各部署、支店などに端
末を設置し、どこからでも検索可能な総合品質情報システム
を開発することができ、TQCの目玉のシステムとなった。
その結果、本システムは高い評価を受けデミング賞を獲得に
大きく貢献した。審査時のデモンストレーションにも担ぎ出
され、成果を評価され社長表彰を頂戴することにもなった。

パソコンによる図書情報総合管理システムの設計開発(1983)
図書情報システム 図書室には当社の頭脳集団である研究者が必要とする情報と
彼らが創り出した多くの情報が存在していたが、その量は過
去からの積み重ね分が存在し膨大な規模になっていた。また
情報の種類も多く、システム化の対象情報を何にするかから
始まって、その情報量の把握、ニーズ、システム化の課題な
ど多くの検討を経て、当時、ある程度の情報量を処理できる
パソコンが出現していて、何とか開発可能との判断を行い、
開発計画を通して予算化することでできた。最初に取り組ん
だのが6万冊ある図書情報であった。開発はデータベースシ
ステムを使って高速な検索ができることを基本にシステム設
計を行い、当時では珍しかった図書のタイトル中の一部の文
字で検索する方法を開発し好評を得た。

TQC−Dプロジェクト統計的手法を学ぶ(1982)
TQC-D Project TQC(Total Quality Control)総合的品質管理は、特に製造業
において、製品やサービスに関わる全ての部門で統計的手法
を用いて品質向上を図ろうという活動であった。当時、建設
業界は同じ製品を作っていないのだから導入は難しいという
意見が多くあったが、製品を作るプロセスやサービスは共通
しているということから大手ゼネコンがその口火をきった。
統計的手法はあまりにも専門的過ぎ、一般の社員でも取り組
めるQCサークルという改善活動を全社をあげて取り組んだ。
企業はTQC の最も優れた「デミング賞」を取るために奔走し
たため本業と改善活動を同時にこなす必要から残業が増え月
100 時間が当たり前となった。社員は疲弊し精神疾患を患う
社員も出て、賞を取った後には、この活動に対する批判が噴
出した。ただ、専門の統計的手法は数学そのものであり、統
計は重要な学問分野で、統計学を学んで広く普及するための
プロジェクトチームが編成され、Dプロの一員となった。こ
こで学んだ分散と標準偏差の違いや因果関係と相関関係の違
いなど興味深いテーマを多く勉強させてもらった。そんな中
理解できなかった概念が「自由度」だった。最近、学び直し
てようやく理解できた。

研究所図書室の業務改善と情報化戦略(1982)
図書室情報化戦略 TQCの導入により、社内で最も多く情報を所蔵している図
書室が旧態依然の紙ベースでは問題ではないかという指摘を
受け、情報処理を専門とする人材を図書室に配置して何とか
してほしいということから図書室の情報化とシステム化に取
組むこととなった。単に既存業務のコンピュータ化では効率
が悪いため、まず、既存業務をシステム化の観点から業務改
善を行う情報化戦略を提案した。基本的には既存業務のシス
テム化による効率化と情報化時代に対応した新しいサービス
の拡充にスポットをあてた。業務改善は図書室の利用者のニ
ーズに応えることを最優先とし図書室の利用要領等各種標準
類の作成から始め、これを基に各種情報サービスの拡充を図
った。また、JOIS、DIALOG、NEEDS-IR、PATLISなどの外部の
情報検索システムを導入し研究員へのサービス向上に貢献し
た。

基本設計におけるCADの課題研究(1981)
CADの課題 当時、CAD は建築の設計において、流行の兆しを見せ始め、
導入の是非や自社開発の是非など物議をかもしていた。すで
に構造設計や設備設計の分野ではその利用が一般化し始めて
いて、そんな中、意匠設計、特に創造性を要求される基本設
計の段階でコンピュータ利用が進まない理由が問題化してい
た。本研究はこの設計段階でどのような作業や行為がなされ
ているかに着目し、それを明らかにすると共に使われる作業
時間も調査し、また、作業の流れについても分析を試みた。
その結果、設計作業を 8個のフェーズに分けられることを提
案し、各フェーズごとのコンピュータ技術との対応でシステ
ム化可能かどうかを分析し、5つのCADの課題を示した。

新しい研究テーマを求めて・Demon Project(1981)
Demon Project 建設業における研究対象が内向きになってきていた中、研究
所長より新しい魅力的な研究テーマを提案してほしいとの依
頼があり、各研究部から11人が選ばれ横断的なプロジェクト
が作られた。本社の経営計画の中にも新しい技術開発が求め
られ、その期待は大きかった。コンピュータ技術や制御技術
を専門とするメンバーとしてCAC(Computer Aided Construct
ion)分野の新しい研究開発として建設ロボットやNATMにおけ
る自動掘削技術などを提案した。これらの技術は、現在、多
くの部分で実用化されてきている。

自動平面配置計画システム・PLANEX(1980)
PLANEX 建築の設計の分野では、以前から設計条件を与えられたら自
動的に平面図が出力されるシステムの出現が望まれていた。
基礎的な研究はあったものの実用性にはほど遠いもので、そ
んな中、この問題の本質を分析し、その結果、分かったこと
はルーズな設計条件では解が無限に存在し、いくら速いコン
ピュータを使っても解決できない。そこで、設計条件をルー
ズな状態から制限を厳しく行く過程をシステムに取り入れれ
ばシステムとして利用できると考え、PLANEXを開発し
た。設計者は設計条件を厳しくしながらシステムと対話しな
がら条件にあった平面型を得ることができる。研究は条件と
解を出すための計算時間も考察し、実用性の検討も行った。
PLANEXはPlanning Expert Systemからとった。複雑な
現象を様々な条件を与えることによりシミュレートし、短時
間に結果を出力するものであり、困難な問題解決に役立てる
ことが可能であることを証明してみせた。

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