「とある司令部のものがたり その6 〜結成、天龍水雷戦隊〜」


 とある鎮守府のとある司令部、その艦娘待機所。

「白露型六番艦五月雨です」
「白露型十番艦涼風だよっ」
「吹雪型五番艦叢雲よ」
「……朝潮型九番艦……霰」

 天龍の前に整列した司令部所属の駆逐艦四人がそれぞれに名乗る。彼女たち五人と
天龍がこの司令部の戦力の全てだ。天龍は彼女らをぐるっと見渡すと口を開いた。

「天龍型一番艦天龍だ。水雷戦隊の指揮を預かった。これからびしびしやりたいと
思うのでよろしく頼む」

 射るような視線で駆逐艦達を見る天龍。値踏みするかのようだ。

「はいっ」
「がってんだ」
「着任早々鼻息の荒いことね」
「……がんばる」

 それぞれがそれぞれの反応を返す。

「そりゃあ、司令に鍛えてやってくれと言われりゃあな。鼻息も荒くなるさ」
「期待しているわ」
「まあな」

 叢雲の態度に天龍がにやりと笑う。

「ところで、ひいふうみぃよっと。駆逐艦はこれで全員か?」
「は、はい、今のところは……」
「どういうことだ? ここにいないのがいるだろう。オレは駆逐艦全員に集合を
かけたんだぞ」

 天龍のトーンが低くなる。

「訓練サボってるのがいるんだよ」
「司令のためには働きたくないと言ってましたわ」

 涼風と叢雲が答える。

「ほう」

 天龍の声のトーンが更に低くなる。

「あ、その、ちょっと協調性の薄い子でして……」
「甘い!」
「ひっ」
「やる気がないなら艦娘なんかやめちまえってんだ。どこのどいつだそれは」
「……曙」

 霰がボソッと呟く。

「よーし、じゃあ今日の午前中の訓練は曙を捕まえることだ。捕まえられなかったら
全員昼飯抜きな」
「そ、それはさすがに」
「横暴だわ」

 五月雨と叢雲が異を唱えるも……。

「そのくらいじゃないと真剣にやらないだろ? ほら行くぞ。訓練にはオレも参加だ。
捕まえられなかったらオレも昼飯抜きだ」
「え?」

 予期せぬ天龍の参加表明。

「そうこなくっちゃ」
「指揮官先頭と言うことなら仕方ないわね」
「……れっつごー」
「おーっ」

 駆けだした天龍の後を追う駆逐艦達。天龍水雷戦隊の誕生の瞬間だった。


「ところで、探すってどこを探せばいいんだ?」
「そんなことも考えずにこれを訓練にしたのですか?」
「こう言うのは勢いが大事なんだよ、い、き、お、い」

 こうして船出した水雷戦隊は、なんとなく前途多難な雰囲気であった。 
 

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