ふと 誰かに呼ばれた気がして編む手を止めました
立ち上がり 秋桜の花の中に入っていきます
しばらく歩いて振り返ると マスターが笑って手を振っていました
わたしもマスターに 手を振ります
大きく 大きく手を振ります
昔 初めてここに連れてきてもらったときにそうしたように
気がつくと 目の前にその時の光景が広がっていました
もちろん わたしの思い出が見せる風景です
『続編なら 見れるよ』
あの時言っていたのは このことだったんですね
初めてここに連れて来てもらった その時
マスター達は わたしとは違うなにかを見ているようでした
『なにを見ているんですか?
わたしも見てみたいです』
マスター達と 同じ風景を見たい
そうせがむわたしに
『そうだなぁ……』
『続編なら 見れるよ』
そんな答えが かえってきました
当時のわたしにはよくわからなくて 黙り込んでしまいましたっけ
あれから何年も経って 今日ようやくわかりました
これが 今見ているあの時の光景が「続編」なんだと
きっと マスターも一緒に続編を見ているんだと思います
あの時の光景が 見えているんだと思います