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陽が西に 傾きはじめました

秋の陽はつるべ落とし 暗くなる前に帰ることにします
 

せっかくこっちまで来たのだから と南の町に寄り道

町外れに車を止めて お店を見て回ります
 

わたしのお目当ては この辺でしか手に入らないお魚

裏のおばあちゃんとケンタさんへの おみやげです
 

マスターのお目当ては……

マスターが とあるお店の前で足を止めました
 

やっぱり です

マスターのお目当ては この町の食堂
 

暖簾をくぐって 中に入ります

中はテーブル席がいくつかあるだけの 小さなお店です
 

お夕飯にはまだ早い時間のせいか お客さんはわたしたちだけ

お店のご主人が 「いらっしゃい」と奥から声をかけてきました
 

一番手前のテーブルに 座ります

背もたれのない 真ん中に穴の開いた丸いイス
 

マスター 壁に掛けられたメニューを見ています

細長く切ったボール紙に マジックで書かれたお品書き
 

マスターがここに来て頼むのは いつも同じなんです

なにを頼むか最初から決めているのに いつもこうしてメニューを見るんです
 

前にそのことを尋ねたら 「気分の問題だ」って言っていました

そういうものなんでしょうか?
 

「椎那はなんにする?」

マスターがこっちを見て そう言います
 

「えーと、いつものを」

わたしがここで頼む物も いつも一緒
 

「えーっと、ラーメンとところてんね」

マスターが 奥にいるご主人さんに声をかけました
 

メイドロボットがなにか食べると言うのは 変なことかも知れません

食べてもエネルギーにすることが出来ませんから 無駄なことかも知れないです
 

でも わたしは一緒になにかを頼むことにしています

もちろん お料理を作る方が嫌がらない限り
 
 
 
 
 


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