街談文々集要見本

１難義ニ越よび候処右勘右衛門不便ニ思ひいろいろと世話以多し候上ニ而
２勘右衛門親分ニ相成高松家中江崎宇平太与申仁江養子尓
３遣し候処三蔵義生得力量強く剣術ハ一傳流の達人丹て
４養父殊之外寵愛致候内程奈く宇平太病死ニ付三蔵へ家
５督相続被仰下其已後段々身持あしく大酒を好ミ不行跡
６多く度々勘左衛門方へ金銀の無心申故随分と用立遣候へ共
７毎度の事故勘左衛門愛相を津かし強く異見致候を遺恨ニ
８思ひ夫より不和ニ相成罷在候所寛政四巳年六月廿
９五日勘左衛門事年貢皆済の為高松表江罷出候処町合ニ而
１０三蔵と行逢鞘尓阿多りしを三蔵日頃意恨を含居し
１１故不礼を咎メ悪口ニ及びけれ共勘左衛門義者自分せ話

１難義（なんぎ）ニおよび候処、右勘右衛門不便（ふびん）ニ思ひいろいろと世話いたし候上ニて
２勘右衛門親分ニ相成（あいなり）、高松家中江崎宇平太と申仁（じん）え養子に
３遣（つかわ）し候処、三蔵義生得（しょうとく）力量強く、剣術ハ一傳流の達人にて
４養父殊之外寵愛致（いたし）候内、程なく宇平太病死ニ付三蔵へ家
５督相続被仰下（おうせくだされる）。　其已後（それいご）段々身持あしく大酒を好ミ不行跡
６多く、　度々勘左衛門方へ金銀の無心申故、　随分と用立遣（つかわし）候（そうら）へ共
７毎度の事故、　勘左衛門愛相（あいそう）をつかし強く異見致（いたし）候を遺恨ニ
８思ひ、　夫より不和ニ相成罷在（あいなりまかりあり）候所、　寛政四巳年六月廿
９五日勘左衛門事年貢皆済の為高松表え罷出（まかりいで）候処、町合ニて
１０三蔵と行逢（ゆきあい）鞘（さや）にあたりしを、三蔵日頃意恨を含居（ふくみおり）し
１１故不礼（ぶれい）を咎（とが）メ悪口ニ及びけれ共、　勘左衛門義は自分せ話