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阿部伊勢守より幕府三奉行及び諸大名へ諮詢の書状

○六月二十六日老中達し評定所一座へ米国国書につき諮詢の件
丑六月廿六日 伊勢守殿・備前守殿三奉行へ直に御渡
   評定一座へ
 今度浦賀表に於て亜墨利加船より差出し候書翰の和解写二冊相渡し候、此度
の儀は実に国家の御一大事にこれあり、通商御許容に相成り候へば御国法相立
申さず却て後患も少なからず、御許容これなくば防禦の手当、上下一同格別厳重に
行届かず候ては、御安心の場合には至り難く候間、右書翰の趣、得と熟覧を遂げ、
彼方の術中に落入らざる様、一体の利害得失後来の所迄も、銘々深く思慮を尽し、
如何様の御処置にて其図に当り申すべしや、仮令忌諱に触候筋にても苦しからず
候間、聊か心底を残らず遺策これなき様、十分に評議致し申聞かさるべく候

○七月朔日老中達し諸大名へ米国国書につき諮詢の件
 嘉永六年七月朔日、老中列座、席々へ伊勢守殿御渡し
   口達
 浦賀表へ渡来の亜墨利加船より差出候書翰の和解写二冊相達し候、此度の儀は
国家の御一大事にこれあり、実に容易ならざる筋に候間、右書翰の趣、得と
熟覧を遂げ、銘々存寄の品もこれあり候ハヽ、仮令忌諱に触候ても苦しからず候間
聊か心底を残らず十分に申聞かさるべく候事
  口達
此度亜墨利加船持参の書翰、浦賀表に於て請取り候儀は、全く一時の権道にこれあり
候間、右に相泥
(あいなず)まず存寄の趣申聞さるべく候事

注:
評定一座: 勘定奉行、寺社奉行、町奉行、大目付、目付で構成
和解二冊: ペリー持参のフィルモア大統領書翰の和訳、当HPペリー再来に掲載
其図: その機会
伊勢守、備前守: 老中首座阿部伊勢守正弘、老中牧野備前守忠雅
一時の権道: 方便
出典:幕末外国関係文書之1(東京帝国大学蔵版)より。 但し原文を読み下し文に変更



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