戻る 落穂集解説
落穂集は江戸中期の兵学者、大道寺友山重祐(1639-1730)が享保12年(1727年)に発表したもので
二種類があり、一つは徳川家康の出生から大坂夏の陣まで編年体で家康中心の伝記、今一つは家康の
関東入国以後江戸時代初期の政治、経済、社会、文化等の各分野の事始め的なものが随筆風に書かれて
います。 国立公文書館には落穂集写本は12種程ありますが、この両方が別々に存在し、内一つだけ22冊
からなる写本の15冊が前者、追加7冊が後者として一括になっています。 歴史の一次資料として良く引用
されるのは後者で落穂選集と云われる事もあるようです。
此処で解読したものは後者で十巻、六十三話からなり、始めの四巻第一話までは古文書教室で解読し、
以降は公文書館所蔵の写本に基づき独自で解読を進めました。 写本によっては十一巻目として
「霊巌夜話大意の弁」と云う治世の有りがたさと家康の行跡を称える内容が書かれた部分がありますが、
これも解読を試みました。 なお自分の理解のために話題ごとに註と現代語訳及び関連年表を付けました。
読み込むと江戸時代の武士の社会も決して杓子定規ではなく、いい話やホットするような話もあります。
作者の友山も兵学者というと何となく固そうですが、文章からみると結構リベラルで豊かな人間性が滲み出る
感じがします。(061125)
下の下線のある項目をクリックすると関連ページが表示されます
1.落穂集解読文総目録
十巻63話のタイトルが表示してあり、 タイトルをクリックすると各解読文が表示されます。
2.同現代語訳(フレームページ)
上記の現代語訳にしたものが表示され、左のタイトルをクリックすると該当する話題が表示されます
3.落穂集関連年表
関連する項目の主なものを年表にしています
4.写本について
落穂集解読で使用した写本の紹介をしています
5.江戸城今昔
江戸城の今昔比較
6.江戸幕府職制(一部)
落穂集の中に出てくる幕府の職制の関連図を一部示します
7.落穂集前編(徳川家康一代記、全15巻)はこちら
8.PDF版
現代文訳落穂集製本版は以下で入手できます。
アマゾン 又は ブックパレット
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落穂集惣目録 下のタイトルをクリックすると解読文が表示されます |
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天 | 地 | ||
一 巻 |
一御当地御城始之事 | 六 巻 |
一以前大名方家風之事 |
一御城内八方正面御櫓之事 | 一莨菪始之事 | ||
一御当地御繁昌勝地之事 | 一肥後守護職之事 | ||
一御城内鎮守之事 | 一御成先御目見之事 | ||
一西御丸之事 | 一東叡山寛永寺之事 | ||
二 巻 |
一御城内古来家作之事 | 一忍破須弁財天之事 | |
一増上寺浅草寺之事 | 一板倉伊賀守殿之事 | ||
一神田明神之事 | 一以前御當地男女衣裳之事 | ||
一江戸町方普請之事 | 七 巻 |
一乗輿御制禁之事 | |
一小僧三ケ条之事 | 一島原切支丹御成敗之事 | ||
一鳶澤町之事 | 一慶長五年以前天下御一統之事 | ||
一博奕御制禁之事 | 八 巻 |
一阿部豊後守殿御一字拝領之事 | |
一石町時之鐘之事 | 一松平越中守殿御乗物拝領之事 | ||
一弁慶堀之事 | 一松平伊予守殿越前本家江相続被仰付事 | ||
一吹上御門外石垣之事 | 一新御番衆初之事 | ||
三 巻 |
一御鷹野先江女中方御供之事 | 一播州赤穂城取立之事 | |
一天下御一統以後将軍宣下御延引之事 | 一安藤右京殿宅江松平伊豆殿入来之事 | ||
一伏見之御城ニ於而討死之息男達江跡式被仰付事 | 九 巻 |
一岡本玄冶法印新地拝領之事 | |
一秋ニ至り収納之事 | 一楠由井正雪が事 | ||
一皆川老甫斎之事 | 一酉の年大火事之事 | ||
一傳奏屋鋪之事 | 十 巻 |
一保科中将殿之事 | |
一江戸武家方町家寺社等普請之事 | 一火事装束之事 | ||
四 巻 |
一制外之家之事 | 一以前町方諸売買初之事 | |
一土井大炊頭殿と伊丹順斎出会之事 | 一朝鮮人参之事 | ||
一御使役之事 | 一躍り児之事 | ||
一小十人衆之事 | 一江戸大絵図之事 | ||
一八王子千本槍衆之事 | 一道灌山之事 | ||
一三池傳太御腰之物之事 | 一松平伊豆守殿阿部豊後守殿江問職御内意之事 | ||
五 巻 |
一洪水之噂之事 | 一山縣三郎兵衛噂之事 | |
一以前町方風呂屋之事 | 一御治世之事 | ||
一飢饉之噂之事 | 霊巌夜話大意の弁 | ||
一武士勝手噂之事 | |||
一留守居役初之事 |
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戻る 写本について
この落穂集には板本は無い様で全て写本で伝わっています。 殆どの写本には写した年代とか写した
人の記録はなく、写本から写本へと書き写された思われ、使用した落穂集の写本はどれも巻末にあるのは
原本の享保12年と友山の名前だけです。 従って写本の時期は紙とかその他をヒントに推定するものと
思われます。
写本によって、言葉使いが多少替ったり、同じ言葉が漢字で書かれたり或いは変体がなになったり、
更に文章を端折る事もあります。 勿論人によりくせ字があり、くずし方も異なりますし間違いもあります。
時々は文章を端折ったのではなく、抜けたのではないかと思われるものもあります。 原本がどうなっている
のかは今となっては分りませんが、複数の写本を並べて見ると元の文章の姿が浮かび上がるような楽しみ
もあります。 従って写本一つだけで解読を進める事は初心者には不明な文字に苦労も多く、文字が読め
ても意味不明と云う事で解読の難しさに直面します。 私の短い経験ですが写本を二つ使えば不明個所は
1/4になり、三つ使えば1/9となるような気がします。 落穂集の解読に当っては国立公文書館の3-4種の
写本で検討しましたが、それでも分らないところもあります。
主として使用した写本コピーを下に一覧します
1. 一巻から四巻第二話まで
古文書教室で配布された講師のM先生所有本のコピーで四巻第一話までは教室で解読。 原本は十巻が
二分冊になったもので、表紙に東京開地とあることから明治初め頃の写本と思われる
2. 四巻三話から五巻終りまで
公文書館内閣文庫所有の2分冊のもの(210-0165)、写本時期不明、江戸時代と思われる。文字は
オーソドックスだが虫食いが多い
3. 六巻及び七巻
同内閣文庫の5分冊のもの(170-0089)写本時期不明、内務省経由内閣文庫
4. 八巻から十巻及び霊巌夜話大意の弁
同内閣文庫の5分冊のもの(170-0073)写本時期不明、内務省経由内閣文庫
各写本コピー(クリックで拡大表示できます)を示し、左側にページの翻刻を付けました。